ちょっと。親友の結婚式の最中に寝るって。うそでしょ。


 え?


 まあ、わたしも寝てるんだけども。


 ちょっと待って。なんであなたがここに。


 なんでって、わたしも寝てるからだけど。


 なんで寝てるのよ。新婦なのに。


 お色直しよ。化粧してる間ぐらい、寝てたっていいじゃない。


 なんで寝るのよ。


 うそよ。ごめん。うそうそ。あなたが席で寝てるのを見て、ちょっとだけお色直しって言って中座したの。いま、彼の隣で隠してもらいながら爆睡してるところ。


 だから。なんで寝てるのよ。もうわたしは放っておいてよ。


 え。なんで?


 なんでって、あなた、結婚しちゃったじゃない。わたしを置いて。なんでよ。なんでなのよ。いや、いいわ、もう。わたしもう死んだの。かにを喉につまらせて死んだの。もういいの。わたしは、もう。


 え。かに、喉につまらせたの?


 そうよ。わたしは死ぬの。もう十分でしょ。解放して。


 ちょっと待って。急いで起こさないといけないじゃない。蘇生しないと。


 待って。


 ん?


 最期に、もう一度だけ。わたしを愛して。最後に。


 なに言ってんの?


 うん。ごめん。なんでもない。


 一緒に住むんだよ?


 え?


 わたし。彼も欲しいし、あなたもほしい。欲しいので、みんなで一緒に住みます。


 え。え?


 あなたの恋人も呼んでね。というか、あなたの恋人はわたしの旦那の恋人なわけだけど。まあいずれ全員が全員の恋人になるでしょ。たぶん。


 え。恋人。旦那の恋人。え。わかんない。ぜんぜんわかんない。まったくわかんない。


 とりあえず起きて。そろそろ、あなたの恋人がサラダ持ってくるよ?

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