256 ヨワの覚悟①
はしごは大変だからとシトネがエンジたちの手伝いに向かった時、またしても突き上げる震動が起こった。今度は間髪入れずに横揺れがはじまる。天井から床から巨樹のきしむ音がまるで悲鳴のように響き渡った。
あまり時間はないと悟り、ススタケを中心にしてとにかく全国民を避難させようと話し合いがおこなわれた。それは国の放棄と同義であったがみすみす土地と心中するよりはましだと満場が一致した。
まずはスオウ王に避難勧告を出してもらい、騎士が四区に散って避難誘導をする。優先順位は――とよどみなく展開される話の中、シトネが戻ってくる姿を横目に捉えた。ヨワはひとつ深呼吸をして母に歩み寄った。
「あの、浮遊の魔法は人数が増えれば力も強まるのかな?」
「え、ええ。そうよ。手を握って輪をつくれば城だって浮かべられたと聞いたわ」
ヨワはあごに指をかけて考え、ロハ先生を見た。しかしやっぱり思い直してユカシイにそっと声をかける。
「ユカシイは山の道覚えてるよね?」
「なんの話ですか」
「カカペト山の洞窟までの道のり」
「覚えてますけどそれが……、え、まさか先輩!」
「おいユカシイ、うるさいぞ」と振り返ったリンをヨワは手招く。
「リン、絶縁錠ってまだある?」
「ん? 俺がひとつ予備持ってるし、詰所戻ればいくらでもあるけど。ヨワお前なに考えてるんだ」
リンには小さな笑みを返してヨワはススタケたちの話し合いに割って入った。
「ひとつ提案があります。でもその前にロハ先生、絶縁錠でクリスタルの魔法を強制的に停止することは可能だと思いますか」
「んー、どうかな。クリスタルの力が強いからねえ」
「たくさんの絶縁錠があればどうです?」
「たくさんの? なるほど、石の共鳴による相乗作用か。箱か袋に入れて密閉空間を作ればさらに効率が上がる。やってみる価値はあるよ」
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