227 ダブルロード③

 ヨワは心をどこか彼方に置いたまま護衛のリンも伴ってユカシイとシオサイの四人でとぼとぼと帰路に着いた。


「それじゃあ僕はこれで失礼しますね」


 西区フラーメン大学の正門前でシオサイと別れた。彼とリンの口数は少なく、疲労は激しいと見えてヨワは心配した。


「今日はゆっくり休んでくださいね」

「そうします。年がいもなくはしゃぎ過ぎたようです」


 苦笑ったシオサイの顔は相当やつれていた。たしか彼の家は在学中の東区イルミナル大学の近くと聞いたがそこまで無事に帰れるか怪しい足取りだ。と、歩きかけたシオサイがふらりと振り返った。


「でも、今日はヨワさんとボードレースに出られてよかったです。ありがとうございます」


 一向にやわらかくなる気配のない夏の日差しに溶けそうな背をヨワはしばらく見送った。


「さあ、先輩。話してもらいますからね」


 腕を抱き込み顔を近づけたユカシイにヨワは元より観念していた。自分では整理のつかないことをいつまでもぐるぐると身の内に溜めておくのがヨワの癖だったが、吐き出してしまったほうが楽になれるとリンと出会ってから学んだ。

 落ち着いて話をするなら私室の鉱物学研究室の資料置き場だが、護衛のリンがよしとしないのではないかと顔色をうかがった。そこへボードレース予選会場に残ったはずのスサビが駆けてきた。ユカシイはわかりやすく喜色を浮かべた。

 オシャマとウララの主婦話はスサビにとって退屈だったらしい。自分も帰ることにした、などと理由を並べていたがヨワはユカシイを追いかけてきたに違いないと思った。

 スサビがいるなら、とリンは人気のない大学の奥深くにこもることを許した。スサビはまだ学生だがリンも彼の実力を高く評価している節だった。


「それで、先輩なにかあったんですか。ずっと考え込んでたでしょ」

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