226 ダブルロード②

「あの、重力と時間の魔法はあなたがひとりでやったんですか」

「そうだよ。僕はダブルロードだからね」


 ダブルロード。懐かしい響きだった。小学生の時、授業で一度だけ触れた。とてもまれではあるが、ふたつの家の間に生まれた子どもの中には両家の魔法をふたつとも受け継いでいることがある。ふたつの魔法を扱える者をダブルロードと呼んだ。


「きみもそうじゃないの? ヨワさんの魔力は僕と同じくらい高いようだから」

「え……」


 もうひとつ、ダブルロードは例外なく高い魔力を持って生まれる。

 正式な順位が発表された。一位はゾオ・ブランチ。二位はヨワ・シオサイペア。三位は最終コーナーで後続を離したスオウ王・ススドイ大臣ペア。リンとススタケは四位だった。

 表彰式がおこなわれ、かわいらしい花束とメダルを受け取る最中もヨワは上の空だった。壇上から下がったヨワを新聞記者が待ち構えていたが、口早にくり出される質問は頭を空転して出ていった。シオサイがうまく切り抜けてくれていたように思う。

 慌ただしいことにすぐにもコリコ杯予選レースがはじまるということで、一般参加者と王族は早々に引き払った。ヨワはこのままユカシイと予選レースを見る予定だったが、そんな気持ちはどこかに消えてしまっていた。

 ススタケは“仕事”に戻り、シオサイも疲れたから家に帰るというのでヨワも彼らに同調してしまうことにした。


「ヨワを送ってやれよ。父親としてな」


 別れ際、ススタケはシオサイにそう声をかけてわざと肩をぶつけていった。彼なりの激励だ。シオサイは痛がりながらも「はい」と明朗に応えた。

 ユカシイはヨワと帰るべきか悩んでいた。会場を振り返った彼女の視線の先にはスサビがいた。ヨワは心得て残るようすすめたが、後輩は大学まで送ると決めてしまった。聡い彼女のことだからヨワの様子の異変を感じていたのかもしれない。

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