214 あなたと波に乗る②

 ススタケの真の狙いに気づいたシオサイは悪い笑みがこの上なく似合う王族に蹴り落とされてしまった。ヨワはびっくりして水しぶきの上がった水面を覗き込んだ。シオサイはほどなくして浮上してきたのだが、そこを待ち構えていたススタケに首根っこを捕まえられた。片手で追い払われたリンがヨワのボードに移ってきて、空いたスペースにシオサイが引きずり上げられた。


「じゃあちょっと借りてくわ」


 軽い言葉を残してススタケは手で方向転換し、開けたほうに移動していった。


「あの人って本当に王族なのかってたまに思う」


 唖然とした衝撃からリンの言葉で我に返ったヨワは、ふつふつとおかしくなってきて声を立てて笑った。


「リンのためだよ」

「そうかなあ。本音も混じってる気がする」

「せっかくだし私たちも練習しよ。ちょっとやってみたいことがあるんだ」


 そう言ってヨワはボードを北側に進めた。南側と違って湖の曲がり具合がゆるやかな北側なら速度を上げられる。勢いのある内はボードはまっすぐ進むはずだ。微細な調整が必要ない分リンもやりやすいに違いない。

 何度か軽快な速度で直線を往復し感覚を確めたヨワは、いよいよやってみたかったことをリンに告げた。


「全力のスピードを出すから、カーブで思いきり曲げてほしいの」

「そんなことしたらスピンして放り出されるぞ」

「なんとかバランスを取ってみる。それができるか試したいんだ」


 リンが渋っているとコーチから声がかかり練習が終わろうとする。他の組が全員南側に引き返したのは好機だった。ヨワはリンを急かして直線の端につき、軽快な速度から徐々に上げていき高速の波に乗った。

 水面を舳先が割って突き進み舞い上がった白波がヨワを挟むように立ったが、一滴の水も触れられないまま後方へ置き去りにした。

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