213 あなたと波に乗る①
「だいじょうぶ?」
そのまま押さえておいたボードに腕をかけたリンは、水がしたたる前髪をわずらわしそうに掻き上げて苦笑った。
「悪い。やっぱ上手くいかないもんだな」
そこへ泳ぎ追いついたススタケがボードに手をかけたのを見て、ヨワは彼の魔力の邪魔にならないよう魔法を切った。やはりバランス感覚は掴んでいるらしくススタケは難なく水中からボードに乗り上げてみせる。つづいてリンが勢いをつけて乗ってもボードはまったく揺れなかった。
「ヨワのほうは順調そうだな。シオサイさん、水上ボードやったことあるんですか?」
リンは同じく魔法を使えないシオサイのことが気になるようだ。確かにはじめこそ四苦八苦していたシオサイだがすでにこつを掴みかけている様子だ。かなり飲み込みが早い。その種をシオサイはちょっと得意げに明かした。
「僕は港町の男ですからね」
「自信があるってそういうことだったんですね!」
漁師として波のある海で船を操っていたシオサイならではの知識と経験で、慣れない魔力コントロールを補っていたということだ。波の少ない湖なら動きの予測もしやすい。なんの基礎もないのは自分だけと知りリンは残念そうに肩を落とした。漁師の経験を聞いたところで騎士のリンがそれを活かすことは難しいだろうし、彼はゼロから自分でやり方を覚えていくしかない。
もっといい方法はないかと頭をひねっていたのはヨワだけではなかった。
「んー。漁師の感覚を感じれば俺ももっとなんか掴めるかもしれないな。よし、ちょっとパートナー交代しようぜ」
ススタケの言葉に全員がぎょっと驚いた。
「今いいところなんです。ヨワさんと連携が取れてきてっ」
「だからこそだろ」
「あー! 妨害が目的ですね!?」
「当たり前だ。お前らだけ上手くなってもおもしろくないだろ。お前も水に落ちろ!」
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