212 親子で力を合わせて⑤
ヨワだけでなくススタケも他の参加者もすぐに感覚に慣れるはずだ。あとは舵役のシオサイと連携を取れるかが問題だ。
「ボードのスピードとバランスは私に任せて、シオサイさんは舵取りに専念してください」
「わかりました。それなら僕もちょっと自信があるんです」
走ってみるとなかなかコース内に留まりつづけることは難しかった。湖はゆるく曲線を描いている。そのためただまっすぐ進むと徐々に中心から離されていき、結果長い距離を走ることになって不利だ。シオサイは微妙なカーブの調整に苦戦した。
またヨワも魔力を注げばいいというわけにはいかなかった。シオサイが方向を直そうとボードを傾けている時に同じ力加減で魔力を流しているとスピンしそうな気配を感じた。その度に慌てて力を弱めバランスを取るほうに集中しなければならなかった。
舵を切る瞬間は減速する必要がありそうだ。問題はそのタイミングをふたりでしっかり合わせられるかどうか。ヨワはひとつ提案した。
「傾きを強くする時に合図をくれませんか」
「わかりました。やってみましょう」
声をかけ合うと断然に曲がりやすくなった。まだ速度は出せないが慣れてくればもっとすばやい連携が取れるはずだ。それに、とヨワは足裏でボードの感触を確かめる。もっと重心を強く大胆に変化させたら、カーブを切ったあと加速して曲がりきることができるかもしれない。
「うわあ!」
悲鳴が聞こえて振り返るとひと組のボードが宙を舞い高い水しぶきが上がった。水面から顔を出したのはリンとススタケだ。ヨワはシオサイに声をかけそちらに向きを変えてもらい、ふたりの元に滑り寄った。
「リン! 急に曲げ過ぎだ!」
「すみません」
水しぶきの波に乗りひとり先に行ってしまったリンたちのボードをヨワは浮遊の魔法で掴まえた。
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