211 親子で力を合わせて④

 さっさとボードを入れ替えられてしまってはヨワもこれ以上食い下がることはできなかった。確かにトトチのボードよりもコリコのボードを持った時のほうがなんとなく落ち着く。しかしヨワは夏風にさわさわ揺れるコリコの枝葉たちにきみじゃないよ、と言われている気がしてならなくてなるべく湖のほうを見た。

 もうすでに湖に浮かべたボードに乗っている組もいて、ヨワもシオサイといっしょにさっそく取りかかった。魔力を込めたボードをそっと湖に置いてまずシオサイが乗る。ボードの上は少しの体重移動でも大きく揺れてバランスを保つのが難しそうだった。なんとか体勢を整えたシオサイから差し伸べられた手を掴み飛び移る。激しく沈み込むボードをどうすれば落ち着かせられるかヨワはもう知っていた。


「あれ? 揺れなくなりましたね」

「魔法で重心のバランスを取ればいいんです」


 傾く方向とそちらに流れていく力の分だけ逆方向に魔力を注ぎ相殺すれば水平を保つことができる。


「浮遊の魔法で覚えた感覚なのでこれには自信あります」


 バランスの取り方に気づかなかった幼い頃は、魔法を使うと一定方向に永遠と回りつづけていたことを思い出してヨワは微笑を浮かべた。


「そうか。ヨワさんの魔法の感覚がこんなところで役立つなんて思わなかったです」


 シオサイは浮遊の魔法だからと思ったようだが、ヨワは確信がないながらもどんな魔法にもその魔法が発動するちょうどいいバランス感覚というものはあるんじゃないかと考えた。

 ユカシイはきっとどこかのバランスが合っていないから人に魅了の魔法が効かないのではないか。またシジマ一家のように同じ魔剣の魔法でも召喚できる剣の種類や大きさが様々なのは、ちょうどいいバランスというものが個人によって違うからだろう。

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