210 親子で力を合わせて③

 いよいよ実際にボードを使った練習に移った。まずはボード選びだが、ボードは使われている木の種類や育った環境によって様々な性質をもっている。ゆえに乗り手との相性のよし悪しがはっきり表れるという。これは主に魔力を使う帆の役が選んだほうがいいとコーチに言われ、ヨワはシオサイと視線を交わしてから立てかけられたボードの前に進み出た。

 するとひと目で気になるボードがあった。まるで引き寄せられるように目が他に移せない。手に取れば確信できる。そう思い手を伸ばした時、横から入ってきた手とぶつかってしまった。


『あっ』


 互いにびっくりした顔を見合わせた相手はススタケだった。


「かぶっても心配しないで。同じ系統の木ならそこまで相性のよさは変わらないはずだから。ええと、そのボードはコリコの樹だな」


 コーチの言葉を聞いてヨワはさらに驚くと同時に、ススタケがこのボードを選んだことに納得した。なんと言っても彼はコリコ国の王族だ。そして庭番の長でもある。植物の声が聞こえる魔法を使えることもあってコリコの樹にはとても愛されているだろう。


「このトトチの木のボードなら相性がいいよ」


 ヨワはコーチに礼を言ってトトチの木でできたボードを受け取った。


「私はこっちを使うから、ススタケさんはコリコのボードを使って」

「いや俺がそっちを使うよ。元はといえばこのレースはヨワのために参加したんだから」

「でも、コリコの樹はススタケさんに使ってもらったほうが喜ぶと思う」

「そんなことない」


 ススタケは考えるようにもう一度そんなことはない、とくり返した。ヨワは不思議に思って首をかしげた。


「コリコの樹がそう言ってるの?」

「もちろん、そうだ」

「本当に? ススタケさんが言ってるだけじゃない?」

「疑い深いな。いいから、ヨワはコリコのボードを使いなさい」

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