204 夏の風物詩②
「すごいって喜んでる。前から思ってたんだが、ヨワの魔法の力は強いな」
「そうなのかな。比べる人がいないから自分ではよくわからなくて」
「父方の家系の影響があるかもしれんな」
そこへ扉がノックされシオサイの声がした。ヨワが扉に触れて開けてやると礼といっしょにハグをしてきた。彼がいつもヨワにするあいさつだった。
「噂をすれば来やがって」
「なんですか噂って。というかヨワさんが来てるなら僕にも教えてくださいよ。ススタケさん最近僕にいじわるしてません!?」
「おう。お前の顔に書いてあるからな。いじわるしてくださいって」
ススタケはシオサイの首に腕を回して捕まえ髪を掻き乱した。庭番流の交流、いつものおふざけだ。ヨワはススタケにはシオサイが実父であるかもしれないと告げてきたことを話した。その時彼は思い悩むような表情をしたことが強く印象に残っている。だがそれは数秒のことで、ススタケはすぐにいつもの豪快な笑みで受けとめてくれた。
確かに本気ではないがススタケがシオサイにいじわるしたり、からかったりする姿が目立つようになったのはそれからのことだ。
「シオサイ。お前の家系は昔、なにかの魔法を使ってたってことはないのか」
「そういう話は聞いたことないですけど、なんですか?」
「いや。なんでもない」
「聞いといてそれ!?」
それでもふたりの関係は良好だ。ススタケが絡むようになった分むしろ前よりも仲が深くなったように思える。漫才師のような軽妙なやり取りにヨワは思わず笑った。
「おーい、ヨワー。そろそろ戻らないと昼休み終わるぞー」
はしごの上で待っていたリンが呼びにきた。クリスタルの間は狭くて万が一の時は満足に戦えないからと、彼はいつも唯一の出入口前に待機している。
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