185 みんなでお出かけ①
「私お出かけってなるといつも荷物が多くなっちゃうの。ヨワちゃんがうちに来てくれたら本当に助かるわ!」
「母さんその話題はデリケートなんだから!」
ヨワを熱くハグするオシャマをリンはそう言ってたしなめ、ちらりと視線を送ってきた。ヨワは微笑みで応える。確かにオシャマに返す言葉はまだ見つからないが、彼女の明るくて暖かい人柄は十分に理解している。ヨワはそれよりも気になることがあり、オシャマの腕から解放されると潜めた声でリンに問いかけた。
「スサビはだいじょうぶかな。ほら、今将来のことで悩んでるって聞いて」
「ああ。だから連れてきたんだ。あいつにも気分転換が必要だよ」
スサビは軽くなった両手を突き上げてあくびをしている。ヨワは疑いの眼差しでもう一度リンに訴えたが、けろりとした答えが返ってきた。
「あいつは嫌なら絶対来てない。自分なりの楽しみ方を見つけられるやつなんだ。流れに任せてればいい。それよりヨワは自分のことを考えろ」
「シオサイさんのことでしょ。わかってるよ」
「ちーがーう」
額を軽く指先で弾かれてヨワは目をぱちくりさせた。
「この計画の第一目的がヨワの気分転換だってもう忘れてたな」
「そうでした……」
「そもそも気分転換の仕方知ってるのか」
「どうだったかな」
「頭をからっぽにするんだよ」
「なるほど。リンみたいに?」
「そうだ。俺のように、ってコラ!」
肩を怒らせ飛びかかるような構えを見せたリンから、ヨワは笑い声混じりの悲鳴を上げて逃げ出した。追いかけてくる手は簡単に避けることができた。彼も本気じゃないとわかるとますます楽しくなってきて、ヨワは束の間オシャマとスサビのことを忘れて先へ走り出した。
「なんだかんだ上手くいってるわよね、あのふたり」
「めんどくさいよ」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます