186 みんなでお出かけ②
オシャマの耳打ちに対してスサビの返しは素っ気ないものだったが、その口元には笑みが浮かんでいた。
「あんなに動き回っても荷物は揺れてない。さすがヨワちゃんねえ」
「……魔法の才があるならそれを活かすべきなの」
スサビのつぶやきはオシャマに届いていなかった。聞き返してくる母に置いてかれるよ、と矛先をそらした。慌てて早足になるオシャマとふざけ合う声だけが届いてくるリンとヨワを追いかけながら、スサビはひとつ大きなため息をついた。
「わあ。ユカシイ、おしゃれしてきたね」
北門前ではユカシイとウララとユンデが待っていた。
ユカシイの服は白のワンピースにつばの広い帽子で遠目からもよくわかった。腰に巻いた空色のカーディガンがアクセントになって女性らしい線が強調されかわいらしかった。
「海といえばやっぱり白のワンピースですもの! 先輩も先輩にしてはがんばったほうですね。普段と変わらないといえば変わらないけど」
チュニックにパーカーとフードをかぶった姿は大学ローブと似たり寄ったりのスタイルだ。それでも出かけ先に大学ローブを選択しなかっただけヨワには進歩だった。口布もしていない。いつもいっしょにいたユカシイだからこそ小さな変化がどれほどヨワにとって大きいことか理解していた。
「あとはこれをつければ完璧かしら」
ユカシイがかごのトートバッグから取り出したスカーフがひらりと風に揺れた。その色はカーディガンと同じ空色だった。ユカシイは慣れた手つきでさっとヨワの首にスカーフをかけ大きなリボンに仕上げてくれた。
「ありがとう。ユカシイ大好き!」
「あたしも先輩だーい好き!」
なによりもユカシイとおそろいの色を身につけていることがうれしかった。
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