151 ユンデの奇妙な言動①
「どうして知ってるの」
「ヨワが話したからだよ」
「うそ。私そんなこと話してない」
病はなにかの拍子に湿疹を見られることはあっても、家庭の事情はごく一部の者しか知らない。
そのうちヨワが直接話をしたのは、ベンガラとハジキ、そしてリンだけだ。ロハ先生とユカシイは人伝に聞いたり、ヨワの様子で察したりしてくれた。
「まさか盗み聞きしたの」
「そんなことしてない。ヨワが僕に話してくれたんだ。僕にしか話せないって」
何度言われてもヨワには身に覚えがない。ユンデに対し疑心が生まれたところに、彼は慌ててつけ加えた。
「あのねあのね。ヨワは気づいてないと思う」
「はあ? 私が知らないうちにそんな話するわけないでしょ」
「でも信じて! 僕は誰にも喋ってないよ。だって僕とヨワの秘密だもん」
その言葉には聞き覚えがあった。ヨワが誰かに向けて言ったものだ。
いつ、どこで、話していたのか思い出せない。それは目の前のユンデではないことは確かだ。けれどヨワはなにかを見落としている。
「僕はヨワの味方だよ。そう決めたんだ」
ヨワが目を見ると、ユンデは気恥ずかしそうにそっぽを向いた。
わからないことだらけだ。ユンデが信用に足る人物かも判断できない。だが、純粋な振る舞いをする彼が悪人とは、到底思えなかった。
「でも最近のヨワはリンとばかりお喋りしててつまんない」
ふと文句を垂らしたユンデに、ヨワは苦笑を隠しきれない。一体彼の情報源はどこから流れてくるのだろうか。
ヨワはもしかしたらユンデも、なにかの魔法使いかしらと考えた。たとえば遠くにいる人物の言動を見聞きできる魔法だ。そんなものがあるとは聞いたこともないが。
「ねえもしかしてさ、ヨワってさ、リンのことが好きなの?」
肩が跳ねるほどの動揺をヨワは咳でごまかした。
「なんで急にそうなるの」
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