150 お祭りデート④

「ヨワ、あの店が気になるの? なにか保存する?」

「保存するものは思いつかないんだけど、氷の魔法が気になって」


 今日の空のような薄青色の生地に、白い氷の結晶が描かれた服を着た男女の店員は、息ぴったりの手際で客をさばいていく。忙しくとも笑顔の絶えないふたりだった。

 結局ヨワはなにも買わず、ユンデは北区の市場近くでおさかなクッキーを買った。

 イスはどこも満席で、少し人混みに疲れたヨワは北門の橋へユンデを誘った。橋ではヨワたちのように休憩場所を求めた人々が、欄干にもたれかかったりその隙間から足を投げ出して座っていたりした。

 ヨワとユンデも空いている場所を見つけて、後者にならった。

 足裏を、たくさん乗せた客のせいで沈みかけている湖上船が通っていく。ユンデにひとつもらって怖々かじったクッキーは、ほんのりミルクの味がした。おさかなとは見た目だけのようだ。


「こんなにたくさん買い食いしたのははじめてだよ!」


 ユンデは少し得意げに言った。普段は倹約家なのかとヨワは感心する。

 そう言われてみればヨワも、普段から買い物はあまりしない。ユカシイに連れ出されるコリコ祭りは楽しいが、心はどこかいつも雲がかかっていた。


「私もこんなに晴れやかなコリコ祭りははじめてかもしれない」


 ユンデの足が気持ちよさそうにぶらぶらと揺れていた。


「ねえユンデ、そろそろ教えて欲しいんだけど。どうして私のことなんでも知ってるなんて言うの」


 竜鱗病のことを知っているのか、とはやっぱり言えなかった。


「本当になんでも知ってるからだよ。肌の病気のことも、お父さんとお母さんとあんまり仲よくないことも」


 ユンデは沈んだ声で打ち明ける。ヨワが驚いて振り向くと、彼はうつむいていた。

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