148 お祭りデート②

 彼はどう見ても同い年か、年下でもひとつかふたつくらいしか離れていないように見えるのに、どうしてもユカシイ以上に庇護欲に駆られ世話を焼きたくなってしまう。またユンデもどんなヨワの気回しも好んで受け入れた。大人の男性らしくリードしようとする姿勢は見せるものの根本的な性格が子どもっぽいのだ。そのせいかヨワは人生初の異性とのデートだというのにちっとも緊張していない。男性に対しては不信感を抱きながら惚れっぽいという難儀な性質を持つヨワにとっては大変珍しいことだった。

 もしかしてうんと小さい頃に会っているからかもしれないと思い、ヨワは問いかけた。


「ねえ。ユンデはどこで私のことを知ったの。いつから?」

「大学だよ。うーんと、一年くらい前?」


 あてが外れた。ますます謎が深まる。


「僕はヨワのことならなんでも知ってるんだ」

「なんでもって……」


 ハタと思い当たる。ヨワは食事をはじめる前に口布を外した。フードはかぶったまま横髪でなるべく頬を隠したが、正面に座るユンデには湿疹が見えているはずだ。しかしユンデはなにごともなかったかのように食事に手をつけた。そのあとも話題にしなかった。それは彼の気遣いだと思っていたが、もしかしたら最初から知っていて驚くことではなかったのかもしれない。

 だがヨワは確かめられなかった。やはりどうしても病のことを自分から話すのは気が重い。どんなにのどの調子がよくても声が出てこない。相手が見て見ぬふりをしているところに手を突っ込んで掻き回す真似はしたくなかった。

 ふいにユンデの楽しそうな笑い声が聞こえた。


「不思議そうな顔してる。だいじょうぶ。あとで話してあげる。僕はちゃんとわかってるからね、ヨワ」


 いちごをひと口で食べてユンデは目を細めた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る