127 ホワイトピジョンの務め③

 ヨワにはわかった。カカペト山のクリスタルの実とは、比べものにならない魔力を放っている。そしてその魔力はずいぶんと馴染み深い。浮遊の魔法だ。


「まさか、コリコの樹を浮かべているの……?」

「こいつは歳を取り過ぎちまったんだ」


 そばの木肌をなでてススタケが言った。


「もう自分を支えることもできない」


 ヨワは目を見開いて振り向く。


「じゃあコリコの国は湖に沈んでしまうの!?」

「そうならないように、俺たち王族は庭番となり、浮遊の魔法使いと協力してコリコの樹を守ってきた。何十年も前からずっとだ」


 ススタケはあごでクリスタルを指した。


「それは湖から偶然ひとつだけ見つかったんだ。だが当時はクリスタルなんて名前もなにもわからないまま、魔法に反応するって理由だけで使われていた。庭番がすぐこんなところに隠しちまったからなあ。ロハ先生が第一人者と言っても過言じゃないだろう。ほとんどのやつらはこの現状を知らねえから、その研究の重要性に気づかないんだ」

「今ロハ先生って言った?」


 ススタケはぱちくりと目を瞬かせた。「ああ」となにかに気づいた声を上げて、後頭部をぽりぽりと掻く。


「そうか。ヨワってロハ先生んとこのヨワか! 話には何度か聞いてる。あれ、なんだよ。ロハ先生のやつ、ヨワが浮遊の魔法使いだって教えてくれなかったな」

「ちょっと待って。ロハ先生ってもしかしなくても庭番の仲間なの?」

「おう」


 あっさりと答えが返ってきてヨワは脱力した。しかしこれでなんとなく筋が繋がった。

 ルルが殺害されてひと晩の内にロハ先生が城へ呼び出されたのも、スオウ王やシジマ隊長と浮遊魔法の継承問題に絡んでいたのも、彼が庭番だからだ。ルルの訃報はおそらく、ミギリやシトネよりも早く庭番に届けられたことだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る