126 ホワイトピジョンの務め②
下りていく内にランタンの緑色の光が弱くなっていった。
足が地に着くとまた扉が現れる。しかしススタケはすぐには開けなかった。
「いいかヨワ、よく聞いてくれ。この扉は庭番の長である俺にも開けられない」
「えっ」
「開けられるのはお前たち、浮遊の魔法使いだけだ。そういう封印がこの扉に施されている」
ヨワは今一度よく扉を見た。しかし大きさも色も取っ手も、今まで見てきた扉となんら変わりはなかった。
ススタケに開け方を教える、と言われヨワは扉に近づく。
「扉に手をかざす。そして力じゃなく魔法で扉を開けるんだ。さっきもやってただろ?」
扉に向けて両手をかざし、ヨワはうなずいた。魔法で扉を開けるのは、いつもやっている横着だから難しくはない。
しかし、ホワイトピジョンの名を取り上げられた自分の魔法で、本当に封印を解くことができるのか、ヨワは緊張で胸が詰まった。
「でもどうしてあなたじゃなくて、浮遊の魔法使いが開けられるようにしたの?」
「扉の向こうを見ればわかるさ」
ぽんと肩を叩かれ、ヨワは意を決し封印の扉へ魔法を放つ。
なんの抵抗も感じなかった。扉はヨワを受け入れるように道をゆずった。
ススタケが手で先を示す。ヨワは青い光がこぼれる部屋に踏み込んだ。
「これ知ってる」
太い根の間のうろに、石がはめ込まれていた。人の頭ほどの大きさでまるく、表面はくすんでいる。しかしどんな鉱石よりも強く青く、魔力に呼応する石。
「クリスタルの実だ」
カカペト山でひとつだけ見つけたそれよりも、目の前にある石はさらに鈍く照りながらしかし、青より濃い藍色を湛えている。小さな部屋はクリスタルの光に染まり、まるで海の底のようだった。
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