125 ホワイトピジョンの務め①
務め。スオウ王やススドイ大臣が話していた、国家の安全と機密に関わる務めのことだ。それはホワイトピジョン家の者なら知っているべきことだが、ヨワは不義の子ゆえにひとりだけ教えてもらえなかった。
「ヨワの歓迎会やるから準備しとけよ、お前ら」
そう言ってススタケはヨワの肩を抱いて歩き出す。庭番たちはにわかに目を輝かせて喜びの声を上げた。
「酒も開けていいんですよねえ?」
ズブロクの期待に満ちた声にススタケはにやりと笑った。
「もちろんだ。じゃんじゃん開けろ。惜しむなよ」
一際高まった歓声が弾けるのを背に聞きながら、ススタケはヨワをどこかへ連れて行こうする。ヨワは背の高い彼を見上げた。
「本当に私が庭番の仲間になってもいいの?」
「当たり前だろ。なんでそんなことを聞く?」
心底不思議そうに問い返されたことがうれしかった。「聞いてみただけ」と返して、ヨワは庭番の仲間のことを思う。
容姿も性格も年齢もばらばらだ。それでもみんな仲間として互いを認め、受け入れていることが肌でわかった。
それはきっとススタケのおおらかな空気が影響している。誰もがみんな、ススタケを親しみにあふれる目で見ていた。
そうでなかったらあの遊び心の数々は芽生えない。
ススタケはたくさん並んでいる扉のひとつを開けて、ヨワを通した。ヨワにはちっとも見分けのつかない扉を、よく迷いもせず選べるものだと感心する。
扉の先にはまた扉があり、その扉を開けると長い長いはしごが地の底まで伸びていた。これを下りるのは大変だと覗き込んでいるヨワに、ススタケは「下ろしてくれ」と言う。
一瞬きょとんとしたヨワだが、すぐに合点がいき魔法をかける。はしごを横目に、ヨワとススタケはふわふわと下りていった。
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