124 秘密の庭④

 やる気のない「おう」という返事とまばらな拍手が起こった。

 ススタケは次に、庭番の仲間をヨワに紹介した。はじめに手で示したのは床から出てきた男性だ。


「このタンクトップのダミ声のいかついおっさんはマンジ・グッドリーフ。野外区の庭師だ」


 マンジは片手を挙げて応えた。スキンヘッドにねじりはちまき、黒々とした眉が特徴的な彼は、しっかり日焼けした肌色も相まって頑固そうに見えた。


「そんで正面にいるひょろいのが、毎度お馴染み赤クマ印の薬師ズブロク・レッドベアだ」

「どうもお」


 間延びした口調と無気力な表情とは裏腹に、ズブロクの髪は真っ赤だった。ワックスをぬっているのかツンツンと逆立っている。服装はやはり作務衣だが、ベンガラやハジキと違って派手な黄色に染まっていた。

 マンジは五十代、ズブロクは三十代といったところか。


「そしてこの中では一番の新顔、ヨワからすればひとつ先輩にあたるシオサイ・ブルーウェーブだ。植物学者を目指すために港町から移住してきたんだ。今は東区イルミナル大学に在籍してる」

「はじめましてヨワさん。よろしくお願いします」


 シオサイは礼儀正しく握手を求めてきた。黒い髪は短く整えられ好印象を受ける。青い目はおだやかな光を湛え、微笑みはやわらかい。

 大学に在籍していると言ったが、シオサイは若くても四十代に見える。しかし仕事のためや退職後の生きがいとして、後々に大学入学する者は珍しくない。

 癖のありそうな庭番の中では、一番親しみやすそうな彼がひとつ先輩でよかったと、ヨワは安堵した。


「って違う違う! 私庭番になるつもりはないから」

「なに言ってんだ。ホワイトピジョ……あー、ただのヨワか。とにかく浮遊の魔法使いはもれなく庭番の仲間になる。それが決まりで務めってやつだ」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る