123 秘密の庭③

「でも心配するな。本人にはちゃんと許可取ってあるから」

「それならよかっ……本人?」

「おーいみんなあ! ちょっと来てくれえ!」


 ヨワの疑問はススタケの大声に掻き消された。彼は唇に指を挟み、甲高く鳴らす。

 やや間があって、あちこちから扉の開く音が聞こえてきた。エプロンや作務衣を身につけた男たちが次々と現れる。


「ここからどんな根っこの先も行けるようになってるんだ」


 ススタケが誇らしげに言った。どうやら広間にある扉はどれも本物らしい。

 その時突然、床板が跳ね上がって男の頭がぬっと出てきた。ヨワは短く悲鳴を上げて驚く。


「なんだススタケ。急に呼び出しおって」


 ガラガラの声で男は怒鳴った。ススタケはこんな身なりでも王族であるのに、まるで遠慮がない。当の本人も笑って返した。


「新しい仲間を紹介したいんだ。ちょっと時間をくれ」


 これにぎょっとしたのはヨワだ。そんな話は聞いていない。仲間になると言った覚えもない。

 そもそもススタケ自身、特に用があってヨワに声をかけたわけではなかったはずだ。引き止めろと言われたから、そうしたのだと最初に言っていた。

 あれ、でも一体誰に?

 まったく状況整理が追いつかないまま、ヨワはススタケに背中を押された。集まった庭番の仲間という面々の前に立たされる。意外と人数は少なく三人だ。


「ネボスケはいないのか。まあ、あいつは夜型だからな。いっか」


 ススタケがぼそぼそと言う。夜型と聞こえて、もしかして光明の魔法使いかなとヨワは思った。


「みんな、この子はホワイトピジョンのお嬢さんだ。名前は……なんだっけ?」

「ヨワです。でもホワイトピジョンはいらない。ただのヨワ」

「ただのヨワだ。浮遊の魔法が使えるから仲間にした。みんなよろしく!」

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