115 第3王子ソヒ②
「この前捕まったまぬけなカブト盗賊団とかいうやつらの一味だろ。仲間を助けにでも来たのかい」
ヨワはにわかに怒りを覚えた。大事な後輩ユカシイを襲った連中といっしょにされるのは我慢がならなかった。ヨワはローブを掴み上げた。
「違います! このローブを見てください。ロハ先生と色違いの大学ローブです」
「そんなの盗んでしまえばどうとでもなる。本当に盗賊じゃないなら顔を見せなよ」
一段と低くなったソヒ王子の声に真の狙いを悟る。王族を前に顔を隠す仕草や、面や布を外さないことは無礼とされていた。本来ならばソヒ王子に気づいた時点で真っ先に口布を外していなければならない。そのことを王子は遠回しに指摘している。
嫌みっぽく回りくどい性格はともかく、ヨワが礼を欠いていることは事実だ。しかし竜鱗病の湿疹をソヒ王子に見せるのは気が引けた。彼の態度はホワイトピジョンの名に酔いしれるミギリとシトネを彷彿とさせる。汚れや醜さとは縁がないと信じ込み、それらをなによりも毛嫌いする類いの人間だ。ヨワは幼い頃から両親を見てきた。直感でわかる。
なんとか見逃してもらえないかとヨワは口を開いた。
「私の顔は病に侵されており、とても王子の目に触れていいとは思えません」
「病? へたな嘘をつくな」
くそガキが。ヨワは渋々袖をまくり未熟な王子に腕の湿疹を見せた。
「本当にございます。竜鱗病という病です」
疑いの色しかなかったソヒ王子の顔つきが変わった。近寄ってくることはないが遠目に鱗状の湿疹をしげしげと見つめてくる。ヨワにとってはあまりいい反応ではなかった。そんなもの早くしまえ! もう行け! と言ってくれたほうがどんなにありがたかったか。
次にソヒ王子の目がヨワと合った時、緑の光彩の中には好奇心がにじみ出ていた。
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