109 もう月曜日⑤
助手は正門とそこから伸びるメイン通り全域の飾りつけが担当になっている。例年通りだ。
ロハ先生は二号館と四号館の玄関。教授は自らの研究室と個室が入っている棟を担当するのが決まりだ。
そうしてコリコ祭り当日には、草花でこんもりと盛りつけられた西区フラーメン大学の完成する。
ところが浮遊の魔法使いであるヨワには、お知らせの紙をどんなに透かし見ても書かれていない担当場所が毎年ある。屋上および手が届かない高所全域だ。指先ひとつで終わってしまう魔法の便利さに、わざわざはしごを引っ張り出してくる者は一年でいなくなった。
毎年張りきって、飾りつけのデザインを考えてくる助手仲間がいなかったら、とっくに投げ出している。
大学は出店も催し物も開くような人間はおらず、祭りに沸く国や街とは一線を引いた存在だった。
ヨワは早々にお知らせの紙を裏返してバインダーに挟んだ。こうしておけばメモ用紙としては役に立つ。
すでに暇そうにしているクチバを呼んで、ヨワはひと切れ残ったサンドイッチをゆずった。
「きみに恵んでやろう。受け取りたまえ」
せつな、目をまるくしたクチバだったが、すぐににやりと笑って「ありがたき幸せ」と戯れに乗ってきた。
「あ、クチバで思い出した。ヨワ、水曜の午後ってあいてる?」
ロハ先生に言われヨワは水曜の予定を頭でなぞった。その日は午前中にすべての講義が終わる。だからロハ先生は午後に、王子の家庭教師を引き受けていた。
「家庭教師のことですか」
「うん。今週はたくさん標本を使いたいんだ。運ぶのを手伝って欲しい」
「ということは、城に行かなきゃいけないんですね」
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