108 もう月曜日④
「それだ! お前が消極的だからリンを拒んだんだろ。それであいつは自信をなくしてふてくされた」
ロハ先生の個室前で足を止めたヨワはクチバを振り返った。事情やリンの気持ちはともかく、根底の問題としては当たっている気がして、なかなか彼も侮れない。
リンはここまで来ると最初からなにも言わずに扉を開けてくれたものだが、クチバは気づく素振りもなかった。両手がふさがっていても扉を開けられる便利な魔法が使えてよかったと思いながら、ヨワはロハ先生の部屋に入った。
「そりゃあいつ童貞だし、女とつき合ったことあんのかも怪しいからよ。がっついてるところあるかもしんねえけど、男ってだいたいあん時は獣だし。夢みたいな幻想はいったん置いて、あいつのこと受け入れてやってくれよ」
ヨワは魔法でぴしゃりと扉を閉めた。
「ここは学び舎ですよ」
衝撃は部屋全体を揺るがし、棚の上に置いてあった紙束が崩落した。机にかじりついて眠っていたロハ先生は文字通り紙束に叩き起こされ、危うく不本意な二度寝をするところだった。
「ロハ先生、おはようございます。たまには片づけをしないといつか怪我しますよ」
「本当にそうだね。気をつけるよ。あ、朝食ありがとう」
「この女コワイ」
朝食は連絡事項や予定を確認する時間でもあった。
ヨワは机の対面にあるイスに腰かけ、クチバは積み重なった本に尻を乗せた。行儀の悪さを指摘するヨワに、クチバはきょとんとした目を返して、頬いっぱいにカレーパンにぱくつく。そのまま三口であっという間に平らげてしまう。
徹夜で護衛をしていたのかと思うと、ヨワは強く言えなかった。
クチバを微笑みで許したロハ先生は、ヨワに一枚の紙を差し出した。コリコ祭りに向けて、大学でおこなわれる準備についてのお知らせだった。
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