107 もう月曜日③

「なんだ、リンから聞いてないのか。あいつは任務を下りたんだよ。だから護衛は十番隊っつうか、シジマ一家の俺たちが交代制で引き継いだ」


 クチバはむすりとした顔で、ここにはいないリンをにらみつけるように明後日のほうを向いた。


「あいつのわがままだ。少しでも面識のある俺たちがいいだろうって」


 リンの残したやさしさに彼らしいと思った。

 彼が去っていったことを知って、思い浮かんだ感情はそれだけだった。リンがいなくなる覚悟はつけていた。自分でもこんな面倒な女とは、いい加減離れたいと思ったくらいだ。

 わかった、と素っ気なくうなずく。震えなかった声に、リンをきちんと諦められたことを確信して安堵した。

 購買部に向かって歩き出すヨワのあとを、クチバが怪訝な表情でついてきた。


「お前らなにかあったのかよ」


 ハムチーズとレタスサンドふたつ、コーヒーとカフェオレひとつずつ、トサカ騎士が横から投げ入れたカレーパンを買うヨワに、クチバが問いかけてくる。


「リンは話してないの」

「お前とのこと聞くとむっすりして終わりだ」


 会計を済ませたカレーパンをクチバに渡し、バインダーをお盆代わりにしてサンドイッチと飲み物を運ぶ。同じように四号館を目指す助手たちの背中を眺めながらヨワは答えた。


「私をコリコ祭りに誘う男性が現れて、そのあとちょっとケンカした」

「なんだよその男って! まさかそのケンカで別れたのか!」


 飲み物をこぼさないよう階段を慎重に上っていく。クチバの大声は反響し、朝にふさわしくないかしましさに助手たちからにらまれた。


「別れたっていうか……別れたことになるのかなあ」

「なんでだよ。お前らいい感じだったじゃん」


 三階に着いて廊下に出る。ロハ先生の部屋は四つ目の扉だ。


「ごめん。私あんまりいいほうに考えられないからわからない」

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