12 悪い知らせ⑥

 それから五年間、あの家とはなんの関係もないと言いつづけてきたのにあの家のことで傷つく心がまだ胸に残っている。一方的に捨てられるのは堪えられない。こちらからも捨ててやったのだという見栄で自分を守ってきた。ホワイトピジョンの務めを知らされていなかったことに衝撃を受ける繋がりなどないはずだ。


「それはよいのだ。ミギリやシトネでも、あのばあさまだって務めは果たせる。ヨワ、お前は世継ぎに専念すればいいのだ」


 まるで犬ネコのお産のようにスオウ王は簡単に言ってのける。ヨワがそれだけはどう足掻いても叶わないと思っていることを王はみじんも知らないようだった。どうせならロハ先生が竜鱗病のことも伝えておいてくれればよかった。

 ヨワはけして自分から病のことを口にしない。口にしなければなにも知らない者にとってヨワの肌はきれいでいられるからだ。


「王様、突然そう言われても困ります。他に手はないのでしょうか。たとえば他国から浮遊の魔法使いを派遣してもらうとか」

「それはならん」


 ヨワの提案をスオウ王はぴしゃりとはねのけた。


「国家の安全と機密を厳守するため他国の手は借りれません」


 それにつづいてススドイ大臣も首を横に振る。ヨワが機密とはなにか質問した声は黙殺された。


「なに。昔から案ずるより産むが易しというだろ。なにも心配することはない。相手はこちらで用意してある」

「げ!」

「ん? すでに相手がいるなら世話はないが」


 ここで堂々と恋人がいると言えたらどんなによかったか。ヨワはいっそのことこの場から逃げるためにうなずいてしまおうかと思った。そこへなぜか期待に満ちた目で見つめてくるユカシイに気づき、やはりすぐにバレる嘘はやめようと思い直した。

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