10 悪い知らせ④

「失礼ながらスオウ王。私はあの家とはもう関係ありません。縁を切られ、ホワイトピジョンを名乗ることを禁じられた私に家名はありません」

「わかっとる。そのへんの事情はザッと教授から聞いたわ。非公式でも構わんから世継ぎの確保が先決なのだ。それくらい事態は重い」

「非公式って……」

「なんかさっきからところどころ軽いわよね、この王様」


 ユカシイがぼそっと耳打ちした。


「ああもう! だから私から説明すると申し上げたではないですか。スオウ王はあっさり言い過ぎです。ヨワはああ見えてデリケートなんです」

「デリケートに見えなくて悪かったですね、先生」

「やっぱり王様って口が軽いのね。サイテー」


 後ろに控える小柄な騎士から噛み殺した笑い声が漏れ聞こえた。


「クチバ貴様笑いおったな。王を笑うとか無職になりたいのかあ!」

「なんで俺だけ怒られるんすか。そこの金髪女子も無礼な発言してましたよね!」

「民の好感度は大事!」


 口にしては元も子もないことを叫んだスオウ王にロハ先生は目を覆い、ススドイ大臣は小さく首を振ってあきれていた。驚いている様子のないふたりを見る限りスオウ王はいつもこのような振る舞いなのだろうか。コリコ祭や豊穣祭であいさつを述べる王の姿からはだいぶ違う印象だ。

 そこへススドイ関白大臣が咳払いをひとつした。それだけで場の空気はがらりと変わった。先ほどまで騒いでいたクチバという小柄な騎士はもう背筋をピンと伸ばしてインテリアのように動かない。城の者ではないロハ先生まで真剣な表情をして大臣の一挙一動も見逃すまいというように注目している。

 はじめて対面したヨワでもススドイ大臣の影響力を肌で感じた。もしかしたら城内という限定された空間なら、大臣は王よりも一目置かれている存在なのではとさえ思うほどだ。

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