第3話
有栖川瑞穂、この人はこの街の市長の一人娘であり、容姿端麗で勉強も学年トップ、去年から生徒会に所属し、今年は生徒会長候補と言われている。
まさかそんな人と同じクラスとは思っていなかった。
まあ俺からしたら関係のない人物だ。
俺とは正反対の存在であるから。そう思っていた。
しかし集っている男子生徒や女子生徒がさっきから鬱陶しい。見に来るぐらいなら話しかければ良いだろう。そう思っていた矢先に一人の女子生徒が有栖川に話しかけた。
「はじめまして。私は佐藤香織と言います。有栖川さんと同じクラスなんて嬉しいです。良ければお話して仲良くなりたいな。」彼女が友好的に話しかけて来た。
俺はこの街のお嬢様なだけにご丁寧に挨拶するのだろうと思っていた。
しかし有栖川が彼女に返した言葉はお嬢様らしからぬひどいものであった。
「私はこの学校に友達を作りに来た訳では無い。友達や恋愛などそんなくだらない物に興味を持つ時間は無い。私はこの学校で常にトップであり続ける事だけが大事なのです。
なのでそこの廊下で群がっている連中も、さっさと教室に戻って、学問に取り組み、私の成績トップを邪魔してみたらどうですか?そうしたら少しぐらいは話してあげましょう。」彼女のこの言葉で、話しかけた生徒や廊下の生徒達はもちろんの事、教室にいる全員が静まりかえってしまった。
廊下にいる生徒達は何かぶつぶつと話し合いながら自分達の教室へ帰り、
有栖川へ話しかけた女子生徒もごめんなさいと謝り自分の席に座り、机に突っ伏してしまった。
俺にあの女子生徒のように勇気と度胸があれば、「あの態度はないだろう」と忠告出来たのかも知れない。まあ俺にはそんな勇気も度胸も無かったので、自分の席で大人しく座っていた。
すると、蒼が後ろから俺の肩を叩いた。
「有栖川さんの事なんだけど、」
どうやら彼女の事について何か知っているようで、俺に話してきた。
「有栖川さんと去年同じクラスだったんだよね。去年もあんな感じでずっとクラスから浮いてたの。3学期はテストの時以外はほとんど教室にも来てなくて、保健室登校してたの。聞いた話なんだけど、ほんとは最難関の高校を受験する予定だったのだけれど、ひどい風邪をひいて入試を受けられなかったらしいの。それでこの高校に来たらしいよ。それで親からすれば、最難関に行けない子供なんて、私の顔に泥を塗ったも同然だと憤怒したらしくて。一人娘なだけに重圧も大きいのかも。」と彼女に聞こえないように耳打ちしてきた。
なるほどだからこの学校で常にトップであり続けなければならないのか。
そのわりには、さっきは邪魔してみろだなんて挑発的な態度を取って。よほど自信があるのかもしれない。
それにしても一番気になるのは、
「なんで3学期は保健室登校してたんだ?」
「さあ、そこは私も知らなくて、クラスから浮いてたから、それで保健室登校になったんじゃないかって。」
それは違うとおもう。それならあんなに自信に満ち溢れたような宣言は出来ないだろうし、クラスから浮いていたわりには、かなりのファンが付いていそうな雰囲気だった。
とことん有栖川瑞穂という女は謎だな。
とにかく彼女も人と関わる気も無いようだし、俺と関係を持つ事はないだろう…。
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