告白
今日、始めて彼の事を知った。
私が思っているよりも、彼はずっと辛い思いをしていた。
寂しそうに語る彼の顔を見て、私は思わず彼に抱きついていた。
「頑張った。頑張ったよ」
「ちょ──」
それだけ言って、私はぱっとハルから離れた。
ちょっと今のは我ながら恥ずかしい。
「よし、行こ! 後夜祭行くでしょ!」
「……ああ。けどちょっと取りに行くものがあるから、先に行ってて」
「え? うん、分かったけど」
そうして、ハルと別れ、私はグラウンドへと向かった。
グラウンドに下りると、キャンプファイヤーを作ろうと、生徒たちが用意を始めていた。
私は階段の所に座って、それを眺める。
これを見ると、賑やかな文化祭も終わりに近づいてるんだなぁ、と少し寂しい気持ちになった。
メイド喫茶は大変だったけど、大盛況だった。
二日目のミスターコンはびっくりすることだらけだったな。
今日のライブはまさかのハルと一緒に出ることになったけど、凄くいい思い出になった。
そんなふうにこの三日間を思い出しながらハルを待つ。
もうそろそろキャンプファイヤーに火がつく、その時。
「こ、恋羽!」
「え?」
名前を呼ばれたので振り返ると、階段の上に女子の制服に着替えたハルがいた。
え!? なんで女の子の格好に!?
ハルが、自分から女装するなんて、そんなの今まで一度もなかったのに!
階段を駆け上がり、ハルの元まで向かう。
「ど、どうしたの!? ハルの方からしてくれるなんて!」
私が尋ねると、ハルは俯いたまま顔を上げない。
……んん?
ちょっとハルの様子がおかしいけど、ハルが自分から女装してくれるなんて!
(今までの私の想いが伝わったんだ!)
これはきっと相思相愛ってことだよきっと!
「もう、んちゅ〜ってして、んちゅ〜って!」
冗談めかしながら、んーっ、と唇を突き出す。
一瞬。
触れる唇。
柔らかい感触。
ふわりと甘い匂い。
キャンプファイヤーへ火が灯った。
私達が赤く照らされる。
ハルが唇を私から離す。
同時に、掴んでいた制服の裾も離れた。
顔が真っ赤なのはキャンプファイヤーに照らされてるからか、それとも──。
「そういうことだから」
ハルはそれだけ言って、走っていく。
私は立ち尽くしてそれを見送くるだけたった。
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