助っ人参上
「困っているようだね奏雨!」
「よし、じゃあ三人とも一番苦手な教科を教えてくれる?」
櫻井を一瞥しただけで、僕は無視して三人に勉強を教え始めた。
「おい無視するなぁっ!」
櫻井がわざわざ僕の目の前までやって来て叫ぶ。仕方がないので櫻井を見ると、無視されてちよっと涙目だった。
「何の用だよ」
「だから君が困ってそうだから助けに来たんだろ!」
「どこから聞いたんだよそれ……」
「秘密♡」
パチン、と櫻井がウインクをしてくる。
「ウザい……」
魚形はいきなり親しげ(?)に話始めた僕達に疑問感じたようで、古木に質問する。
「えっと、古木先輩。あの方は……」
「奏雨のライバルって感じかな。まあ一方通行だけど」
「一方通行?」
「櫻井は奏雨に次いで学年二位なんだけど、一度も奏雨には勝ったことがないんだ」
風間が横から説明を付け足す。
「彼女は負けず嫌いらしいよ」
「だから対抗心燃やして、毎度定期テストの度に勝負してるんだよ」
「ははあ、なるほど」
古木の風間の説明に納得する魚形をよそに、僕と櫻井は言い合いを続けていた。
「だから要らないって」
「でも、君も四人を抱えて自分の試験勉強は厳しいんじゃないかな?」
「うっ……」
それは確かに……。
教えるのが二人減るとぐっと楽にはなるけども……。
図星を指された僕の反応を見て、櫻井がぱん、と手を叩く。
「よし、話は纏まったな。そこの女子二人、着いてきたまえ」
「え?」
「へ?」
魚形と張替が同時に声を上げる。
「いや、どこの馬の骨とも分からない女を奏雨の横には置いてけないだろう?」
櫻井がその小さな唇がから息を吸う。
「──私の許婚なんだから」
「「え?」」
魚形は呆けた声を上げ、張替は表情が固る。
古木と風間の二人は、「あぁまたか」といった様子だった。
慌てて僕は櫻井の言った事を否定した。
「いやだから、いつも言ってるけと僕は許婚じゃないって!」
「え、親も了承したのに?」
「了承したのはお前の親だけだ!」
僕の親はそんな事全く知らないんだよ!
「だいたい、お前は僕のこと全然知らないだろ!」
僕がそう言うと櫻井は自慢気な顔でぐっと親指を立てた。
「大丈夫。しっかりと身辺調査は済ませてある」
「余計問題だ!」
「私は不満かな?」
「不満だ!」
「お金の事なら私の家は不自由させる事は無いけど?」
その櫻井の発言に疑問を持った魚形が、またもや古木に質問する。
「えっと、櫻井先輩のお家は……」
「でっかい財閥だな」
「ええ!? そうなんですか!?」
その時、今まで聞いていた張替が少し顔を引きつらせて櫻井に聞いてきた。
「な、なんで櫻井さんはそんなに許婚になりたいの……?」
張替の質問に櫻井は何故かしたり顔で話し始める。
「まず一つは、私が勉学で勝てなかったのは彼一人だけだということ」
二本目の指を立てて櫻井が話す。
「二つに、櫻井家はそんな優秀な遺伝子を取り込む必要があるということだ」
「い、遺伝子!?」
「? 別に普通のことだろう?」
その問題発言を当たり前のように言う櫻井に張替がドン引きしている。
その気持ちすごく分かる。
やばいよな、コイツ。
「まあとにかく僕は認めてなければそれで済む話だから。それより早く勉強始めないと間に合わなくなるぞ」
僕がそう言うと櫻井は納得して頷く。
「それもそうだね。じゃあ──」
おずおずと魚形が手を上げた。
「あの、私は奏雨先輩との約束があるので……」
「そうだな。僕も一度やったからにはしっかり最後までやりたい」
「……それもそうか。よしなら張替さんと古木君はついて来るんだ」
「えー、私も──」
「ほら早く」
「ぶー……」
櫻井が、不服そうな張替の背を押して連れて行く。
最後に僕に向けてウインクすると、別の机まで行ってしまった。
「行っちゃっいましたね……」
「全く、ストイック過ぎなんだよなアイツは」
今回も、どうせ「君だけハンデを背負ってるのは不公平だ」とかそういう事だろう。
僕に勝ちたいくせに。ほんと公正な奴だ。
「よし、僕達も始めようか」
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