第2話

考えていると、若い男がカーブの先から突然現れた。


そして俺と目が合うと、一目散に俺の前までやって来て、強い口調で言った。


「おい、どこ行ってたんだ。探したぞ!」


どうやら俺の知り合いのようだが、俺には誰なのかがまったくわからなかった。


なにも答えずにいると、男は俺の肩をつかんだ。


「おい、兄さん。あれを持ち出しただろう。返せよ!」


話から推測するに、この男はどうやら俺の弟のようだ。


しかしやはり俺には全く見知らぬ男だ。


俺がそのまま見ていると、俺の手をつかんだ。


「なにも言わないつもりか。それなら家まで連れて帰る!」


そう言うと強い力で俺の腕を引きながら歩き出した。


俺は抵抗することなくついて行った。


弟はまばらに建つ家を数軒横切り、一軒の家へと入っていった。


「おい、兄さん見つけたぞ」


弟がそう言うと、なかからわらわらと人が出てきた。


中年の男女二人。老人の男女二人。中年男が言った。


「おい、あれのありか、聞いたか?」


「それが父さん、兄さん何も言わないんだぜ」


弟の話からすると、中年男は俺の父親らしい。


まるで覚えはないが。


「おい、たかひろ。あれを持ち出しただろう。どこへやった!」


俺の名前はたかひろと言うのか。


そんなことを考えていると父が言った。


「なに黙っている。おい、なにか持ってないか調べるぞ」


父がそう言うと、弟と父が両側から俺の手を抱えて、奥の部屋まで連れて行った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る