あれ

ツヨシ

第1話

目が覚めた。


見れば崖が目の前にそびえている。


俺は崖下で倒れていたのだ。


――あそこから落ちたのか?


覚えがない。


とにかく起き上がろうと上半身を起こすと、後頭部に激痛がはしった。


――!


恐る恐る触ると、俺の後頭部はじっとりと濡れている。


手を見ると赤く染まっていた。


どうやら俺は崖から落ちて、頭を打ったらしい。


――まったく……。


起き上がり、そこで気がついた。


ここはどこだ? 


そして一体俺は誰なんだ? 


わからない。


なにも思い出せない。


しばらく戸惑ったが、こんな崖下にいつまでも留まっているわけにもいかない。


俺は歩き出した。


しばらく歩くと、上に登る細道があった。


自然にできたものではなく、人の手で創られたものだ。


俺はそこを登った。


崖の上に出ると、崖に沿って舗装された曲がりくねった道があり、崖の反対側には家が建っている。


どうやらこの道沿いにある小さな集落のようだ。


――どうしたものか……。

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