休日とお出かけ ②
いろんな店を一緒に見て、所々俺は、店の外で待って二人の様子を見ていた。
志保はこれまで練習で割と長い時間一緒にいることが多かったが、美影はクラスが一緒とはいえそんなに長い時間一緒にいたのは学祭の準備をしていた時ぐらいだ。
改めて、私服姿の美影を見ると、かなりのレベルの高い子だ。いつも制服姿で意識していなかったが、背もそこそこあり、スタイルも悪くない顔もかなり綺麗で周りからの視線を感じることが多い。
志保もなにもなければ可愛いらしさがあるし、俺は周囲の男達から敵対視されてないか不安になった。二人の後ろを歩きながら、美影の横顔を何気なく見ていると志保が俺の頬をぎゅっと抓ってきた。
「痛っ……何だよいきなり」
「ふん! じっと見ていたでしょ美影の顔、さっきから私が何度も呼んだのに全然気づかないし……」
抓りながら志保は不貞腐れた顔をしている。隣にいる美影は恥ずかしそうに顔を少し赤くして俯いている。俺はさすがにマズイと反省して志保に平謝りをする。
「……ごめん、別に見入っていた訳じゃないだけど……それで何の用事だったんだ?」
話題を逸らそうと志保の顔を見るけど相変わらず不機嫌なままのだが、仕方なさそうな口調で返事をした。
「もう……そろそろお昼食べない?」
「はい、分かりました……」
俺は余計な事を言わず素直に答えた。
フードコートに向かうとピーク時間を過ぎたとはいえまだ人が多かった。まだ並んでいる店もあるが、座席は何とか確保出来そうだった。やっと志保の機嫌も落ち着いてきたようで、ホッとしながら座り荷物を置く。美影がお手洗いに行くと言うので一人席を離れる。
「由規、さっきは美影の……」
機嫌が直ったかのように見えた志保だったが、美影がいなくなると同時に追及が始まろうとしていた。その時、後ろから久しぶりに聞き覚えのある声がしてくる。
「せ―んぱい、誰だかわかります?」
いきなり目隠しをされてしまうが、この声とこんな事をする後輩は一人しかいない。
「恵里だな……」
「あったり! さすがですね、センパイ」
振り向くと髪が伸びたが間違いなく恵里だった。しかも私服姿で以前よりもぐっと大人びた雰囲気で周囲の視線を独り占めするぐらいの勢いだ。
またそれを恵里は気にすることなく自然に振る舞うのでこちらが参ってしまう。
「相変わらずだな、恵里の存在感は……」
「何を言ってるんですか、私は変わってませんよ。あっセンパイ、体治ったんですか、部活は?」
「あぁ、もう完全に治って、部活も復帰したぞ」
「よかった……安心しましたよ……あれ、マネージャーの人が」
志保の顔を見て何か思い出したようだ。そう言えば以前、俺が部活を休んでいた時に恵里が来た事を思い出した。
「こ、こんにちは」
志保がペコリと挨拶をするが様子が変な気がする。
(まさか恵里に圧倒されているのだろうか……)
「こんにちは」
恵里は丁寧な笑顔でいつもと変わらない様子で挨拶をするが余裕があるように見える。俺は一瞬、頭の中でいろいろ心配をしたが、すぐに少し離れた場所から恵里を呼ぶ声が聞こえた。
「じゃあ、センパイ、また春に会いましょうね。浮気したらダメですよ!」
ペロッと舌を出して悪戯っぽく笑い、声がした方へ向かって行った。
まるで台風が過ぎ去ったような雰囲気だ。志保が意気消沈したような表情で固まっていて、予想どおり恵里の勢いと存在感に圧倒されたようだった。
恵里と入れ替わるようにして美影が戻って来た。
「どうしたの、志保? 宮瀬くん、何かあったの?」
美影は心配そうな顔をして俺を見るが、何て答えたらいいのか分からない。
「どう説明したらいいのか……難しいな……」
とりあえず恵里が来たことを説明をすると美影は何とも言えない不思議そうな顔をしている。話終わる頃には志保も大分回復してきて話に加わろうとしてきた。
「……負けないもん……絶対に……」
逆に段々と闘志が湧いてきたのか、燃えてきたようだ。
俺はため息を吐き苦笑いをしていたが、最後に恵里が言った言葉が気になった。
(恵里の学力からしたらもっと上のランクの学校に進学するはずだが……)
何か嫌な予感しかしない。そんな事を考えていると、美影はあまり状況が飲み込めずに、しばらくの間不思議そうな顔をしていた。
この後、昼食をとりまた店を廻る。途中で三人お揃いのカップを買ったり、復帰のお祝いと言って二人がおしゃれな感じのフォトフレームをプレゼントとしてくれた。志保が言うには「これから試合とか沢山とるから飾ってね」との事だ。
久しぶりに遊んで疲れた帰り道に、部活の話題になり美影が思い出したように話す。
「この前、顧問の先生とキャプテンが練習試合をするみたいな話をしていたよ」
「へぇ、それは初耳だな」
俺もまだ耳にしていないし長山達も知らないはずだ。
「でも、まだ具体的には決まってないみたいよ、近場の学校と試合ができたらいいって言ってたけどね」
美影の情報なので間違いはないので近いうちに連絡があるだろう。俺的にも県大会前に調整を込めて試合形式がある方が助かる。
最初に集合した駅に着いた時は、もう夕方で日も傾きかけていた。
「んじゃ、また明日。ありがとう、志保、美影。いい気分転換になったよ」
俺が笑顔で話していると、志保が少し残念そうな表情で笑っている。
「そうね、楽しかったわ。でも次は二人きりで遊びにいくよ」
そう言いながら志保は美影の顔を見ている。
「私も久しぶりに楽しかたよ、また皆んなで遊びに行こうね」
志保の言うことを構わずに美影は優しそうな笑顔をしている。そんな二人のやりとりを見ながら久しぶりに心から楽しい一日を過ごす事が出来た。
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