諦めきれないと次の冒険へつながるらしい


 「ねぇ? 師匠、このバリカン...........あっ、違った、エクス刈リバーってネーミング誰がつけたんだろうね?」


 エクス刈リバーだと言う名前であるのは、認識しているはず、はずなんだけど口からは、バリカンと言ってしまう。

私........あのエクス刈リバーをエクスカリバーと認めたくないらしい。まぁ、どこからどう見てもバリカンだしね。

うん。諦めよう。これ、無理だな。


 「う~ん。それは、聞いてないなぁ。」


姉弟子二人にも聞かされていないらしい。

てか、私、姉弟子二人の名前知らないな。どこにいるかも知らないし、どういう人かも知らない。これで数年、挨拶とかいいんだろうか? う~ん。もうちょっと、強くなったらにしよう。弱い状態で会うのは、姉弟子達をがっかりさせてしまう。それは、ダメだ。恥ずかしいし、申し訳ない。


 「師匠、あのさ...........。姉弟子について今度知りたいな。合うのは、もうちょっと強くなってからがいいけど...........。」


バリカンもとい、エクス刈リバーの話から姉弟子二人の話になり、驚いた表情をしたがすぐにいつもの笑顔を見せて私の頭を撫でる師匠。優しく、柔らかい表情をするイケメン。

くっ、破壊力が高い。


 「そうだね。今度、カミラの命日にでも、合わせるよ。ま、その前にリタの言う通り強くならないとだけどね?」


 「ほんと? 師匠って、よくいろいろあやふやにすることあるよね?信じてもいいの?」


特に、年齢とか。

このセリフは、師匠に聞こえないように心の中でいう。

毎年一回は、聞いている。けど、はぐらかされる。その一回でやめてるけどね。


 「勿論。て言うか僕は、あやふやにすることはないよ。ちゃんと、やらせることはやらせてるでしょ?修行。」


修行に関しては、あやふやにしてないけど、その他てか、師匠に関しての質問はいつもあやふやにしてるじゃん。

と思ったが言わない。


 「そっ、そうだね........。じゃあ、期待して待ってるよ。」


ニコッと笑顔を顔に浮かべて、師匠に答える。昔よりも高くなった身長。師匠との目線も日に日に高くなってきている。

私のちょっとした楽しみだ。目標は、師匠と同じぐらいか、ちょっとしたを目指す。


 「うん。待ってて........」


その言葉の後に少し喋っていたみたいだけど、声が小さくて聞こえなかった私は、もう夕飯のメニューを考えていた。

昼食もまだなのに。





※※※





 「...........それと、いつか、君に僕のことを話せたらいいけど........」


 レスターは、成長した自分の弟子を見ながらそんなことを口に出していた。最後の言葉は、リタには聞こえていなかった。自分のことは、あやふやにしているレスターにリタが年齢やレスター自身についてのことを言わないのに心の中で苦笑した。言ってこないだけで顔にでていたからである。


 (優しいな........。リタは。)


今はもう自分のことではなく、他のことを考えているのだろう。夕飯のメニュー辺りだろうなと思いながら、弟子を見つめる。カミラから託された子供がこんなに成長した。


 (早い........な。もう、十二年。あっという間だった。)


レスターの瞳にあの日のカミラが映る。

そして、ゆっくりとリタとの日々に移り変わる。


 「話せる日がくるといいね..........。」


 その声もリタには、届かず、部屋の中にゆっくりと消えていった。





※※※





 「師匠、伝説の剣とかは、ないの?」


エクスカリバーは、なかったけど...........。あったと思ったら、バリカンだったし...........。

諦めきれない私は、エクスカリバーはないけど伝説の剣はあるんじゃないかと思った。なので、聞いてみることにした。


 「あるかもしれないけど...........興味なかったからな........。そういうの........。」


 「そうなの?」


意外である。

集めてたりしてそうなのに........。

持ってないのか。


 「うん。あ、でも、百二十年ぐらい前にそう言う剣がこの国の火山で見つかったって聞いたなぁ~。持ち出した人とかの噂、聞いたことないから、まだその火山にあるかもね?」


 さらりと、師匠が百二十年生きていることが暴露されたけど、対して驚かないな、私。スライム探しに行った時にも、さらっと師匠、百年前に~とか喋ってたし、あんま驚かなくなったな。それに、もしかして、百年前以上は生きてるよね?って思ってたし予想通りである。


 「百二十年も経ってるのに、持ち出した人がいないってどんだけ、その剣を取りに行くの大変なの? ...........ん、でも、どうして、その情報が伝わってるの?」


 「火山にしか生えない薬草を採りに行った冒険者が、帰る時にたまたま目撃したらしいんだ。気になって、見に行こうとしたけど、剣があった場所がその火山最大の危険地帯だったらしく、断念したらしいよ。命は、大事だからね。で、取り敢えずギルドに報告をしたんだ。すると、それを聞いた冒険者が確認のために火山に行ったんだ。何人かのパーティーが報告に聞いた危険地帯に行くと冒険者が見つけた剣があった。剣を確認しにきた冒険者は、その剣欲しさに危険地帯に足を踏み入れた。そしたら、その冒険者は、亡くなった。残りの仲間がそのことをギルドに報告して、火山で見つけた剣の話が国中に広がったんだ。」


 ざっくりとした説明を一気に喋ったことにより、口の中が渇いたのだろう。師匠は、お茶を飲んだ。コップに入っていたお茶を全部飲み終えた師匠は、コップに新しいお茶を注いだ。注ぐ前に水でさっと注ぎ、緑茶から紅茶にする。

紅茶は、この世界でもありそうだなぁ~と思っていたけど、まさか、緑茶まであるとは思わなかった。あるってわかった時すぐに師匠に買って欲しいとおねだりをした。

買ってくれた時は、すぐさま開封して入れたものだ...........。

懐かしかったな。

...............おっと、話がそれた。


 「その火山って、どこにあるの?」


 本題に戻して、危険地帯の場所にある伝説の剣について聞く。死者も出る火山って多分あそこしかないと思うけど...........。もう、十二年も生きているのでこの国のことも把握している。火山と言ったら、この国じゃあそこしかない。


 「シュガー火山だよ。」


 「あの、名前に反して全く甘くない火山...........。」


 死者が出る危険地帯がある火山の名前にしては、ファンシーである。ものすごく、メルヘンぽい名前の場所だが実際は、普通の火山である。シュガーって名前をつけた大昔の人どういう心境をしていたのか気になる。


 「うん。そこだよ。そこの危険地帯、霧の森。」


 シュガー火山の危険地帯は、森林地帯である。火山なんだから、火口辺りが危険地帯何だろうなと思う人もいると思うけどシュガー火山は違う。シュガー火山の反対側の法にある森林地帯が一番危ない。

あそこには、火系魔物は勿論、水や土、闇の属性魔法が使える上級魔物がいる。ワイバーンよりも強い魔物がうじゃうじゃと生息している。ワイバーンなんてその魔物達からしたら赤子同然のレベルである。

今の私が行ったら、即死である。

森林地帯の特性で常に霧が発生するため、霧の森と呼ばれている。霧が濃いと魔物と鉢合わせをしてしまったり、道に迷い、帰れなくなると危険なのである。


 「霧の森の入り口付近にあったらしいよ。じゃないと、見つけられないよね。...........今、どうなってるかは、わかんないけど。」


 「...........百年以上経ってるしね。」


クッキーと一緒に飲んでいたお茶がコップからなくなったので、新しいお茶を注ぐ。さっき飲んでいたお茶と同じやつを注ぐ。あー、旨い。


 「でも、あの類いの物は、簡単には壊れたりしないからね。大丈夫だと思うよ?...........リタ、行きたいの?」


 行きたいかと言われれば行ってみた。

けれど、危険地帯....霧の森に行くには結構な実力が必要になってくる。私で生き残れるだろうか?


 「うん。...........生きたい。」


きっと、というか、確実に今の私じゃダメだと思うけど、行ってみたいという思いがあった。

どんな修行でもやってやる!と気持ちを込めた目をして師匠を見つめる。


 「そう言うと思ったよ。けど、今はダメ。もっとたくさんのことを学ばないと、ね?それに姉弟子からも、学べることがあると思うし、もう少し、リタが大きくなったらだね。その時は、最初から最後まで自分でやってもらうから、二、三年我慢して?」


 「うん!師匠、これからお願いします!!」


椅子からいきよいよく立ち上がり、師匠に向かって挨拶をした。やった!!!これでシュガー火山に行ける!

伝説の剣を拝めるかも!!



 こうして、伝説の剣に期待を込めていたのに、バリカンで自分の小さな夢が壊れリタの心は復活したのだった。



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転生少女の異世界魔法士記録 水瀬 立 @green2707

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