可愛いスライムを飼うことにする


 先ほどの師匠と同じように、片手をレアスライムの方にだす。しばらく、私の手はそのままの状態が続く。風が私の髪を揺らし綺麗に揃えた髪は乱れた。風にふかれて飛ぶ葉っぱは、私達の周りを通りすぎていく。


 「こんにちは。」


言葉を発しないスライムとの長い沈黙に堪えられず、スライムに向かって挨拶をしてみる。帰ってこないことがわかっていても、ついつい言葉を期待してしまう。

何か........恥ずかしいな。

はたからみたら、微笑ましい少女の行動だと思われると思うが精神年齢は、今世も合わせると二十代。私の心にダメージがくる。


 「...........スライムは、喋らないよ?」


後方から味方からの精神攻撃。

師匠そこは、見ないをふりしてほしい...........。

師匠をチラッと見ると心配そうな顔をして私を見ている。肩にいたスライムは、頭の上に移動していた。

イケメンの上にスライム...........。違和感があるようなないような........?感じだな。


 「わかってますよ。」


スライムを見ながら答える。声がちょっと大きくなってしまった。恥ずかしさを隠すため、つい声が大きくなってしまったのである。


 ぷよぷよ。


 ダメージをおった私の精神を少しずつ、回復し始めたところ。レアスライムに向けていた片手に違和感を感じる。

ぷよぷよとして冷たい感触の何かが私の手を触っている。その感触の招待は、私の前にいたレアスライムだった。


 可愛い。そろりそろりと私の手のひらの上に乗る。手のひらよりもレアスライムの大きさは大きいため、私の手から身体がはみ出している。頑張って落ちないように身体を揺らしながら動く。

可愛い...........。

ようやく安定してのれたのか、スライムは動かなくなった。軽そうに見える見た目に反して重いスライム。

ゆっくりともう片方の手でスライムが乗っている手にそえる。落ちないようにしっかりと身体を支える。

レアスライムは、乗る場所が広がったことに気づき揺れながら動き身体をすべてのせる。

可愛い...........。かわいすぎる。


 「このスライム...........可愛い........。」


両手に乗ったスライムを見ながら、思っていたことが漏れてしまった。

レアスライムは、私の手にすりすりと身体をすり付けてきた。十歳の手には、スライムはまだ入りきらないが安定はする。その安定が動いたことにより崩れそうになる。


 「かわいい...........。」


またまた、声に出していたらしい。私の声を聞き、師匠が歩いてきた。隣にきて、両手にいるレアスライムをさわる。

触られたスライムは、ぷよと動く。

可愛すぎる...........。


 「ふむ...........。このスライム、珍しい個体だね。」


スライムを触りながら、観察しだした師匠の言葉に「え?」と疑問を抱く。珍しい? そりゃあ、核がレアなスライムだからね。珍しいでしょ。


 「レアなスライムなんだから、あたりまえじゃないの?」


私の声に師匠は、首を横にふり否定する。

否定する師匠が見ているスライムを凝視する。両手を少し動かしスライムの身体を動かす。

何か...........違うの、か?


 「レアなスライムってことは、合ってるんだけど...........このスライム多分、........お金になる魔法石をいっぱい産み出せるんだ。」


 「魔法石? それは、レアなスライムの核ってこと?」


核と何が違うんだ?

新しく出た単語について頭を悩ませる。

お金にならないと言うことなの? それとも、スライムの核は、取れないと言うこと?

えっ!えっ! じゃあ、お金もらえないの?

私のスローライフと老後が...........。

まあね、そんなすぐにお金がたまってスローライフとかできると思わなかったけどさ...........。ショックだ。


 「核とは、また違う物だよ。魔法石って言うのは、スライムの核みたいに魔力を含んだレアな石のこと。原理は、スライムの核と一緒だけどね。...........だから、そんなに落ちこまないで、お金はレアスライムの核を売るより稼げると思うよ。」


落ち込んでいた私を元気ずけるために、後半明るく私に説明する。


 「お金稼げるの!? ...........そう言えば、魔法石って言うのを産み出せるってさっき言ってだけど...........。それって、このスライムが死なないでずっといるってこと?」


 「そうだね。...........愛着がわいて、そのスライム飼いたくなったの?」


頷いてから、私が思っていたことをあてる。

さすが、師匠。大当たり!!

その通り、私はこのスライムに愛着をもってしまった。

レアなスライムだったら、核を抜いてしまったら死んじゃうし...........。ものすごく悩んでいたのである。

でも、師匠の話を聞いて核を抜かなくてもお金が稼げると知ったのでこのスライムを飼える。

やったね!!

あっ、でも、師匠に聞かないといけないことがある。


 「師匠...........、この子飼っても...........いい?」


あの家は、師匠と一緒に住んでる。飼うなら師匠の許可は、必要である。


 「いいよ。でも、自分で面倒は見てね?大切に育てるんだよ?」


わかっていたのか返事は、早かった。悩んでいる様子でもなく、すんなりと返事がかえってきたため、予め、予想していたのだろう。


 「うん。ありがとう!...........でも、スライムって何食べるんだろう?」


 「何でも食べるよ。」


何でも、食べるのか。

んー、何食べさせようかな........。


 「いや、その前に...........。確認してなかったことがあるな。」


そう声にだしながら両手にいるレアなスライムに語りかける。


 「君、私と一緒にこない?」


レアスライムに一緒にきてくれるか聞いていなかったことを思い出した。これ大切。

両手に乗っているスライムは、私の言葉の意味がわかったのか、身体を上下に動かす。両手からおちそうになり、いそいで、身体を安定させる。


 「来てくれるんだね?やったね!!」


スライムの動きから、ついて来てくれることを確認する。

やったね!!お金も稼げて、こんなかわいいスライムと暮らせる。超絶、嬉しい!


 「リタ。新しい家族が増えたね?」


師匠が嬉しそうな表情をして私に聞いてくる。


 「うん!!!」


十歳児の私の全力の笑顔を見せる。両手にいたスライムを胸に抱きしめて抱える。かわいい。そして、柔らかい。


 あれ? そういえば...........。

師匠の肩にいたスライムがいなくなっている。


 「師匠...........肩にいた........スライム、は?」


師匠の肩に視線を向けながら聞く。若干、顔がひいているのは許してほしい。

まさか、もうスライムをポーションの材料にするために瓶とかに積めたのかな?...........おっ、恐ろしい。


 「ん?...........あぁ、あの子だったら群れに返したよ...........。」


予想は外れて、スライムを瓶ず目にはしていないらしい。

よかった。

あれ? そういえば、ここにきた目的って...........。


 「ねぇ、師匠。ここにきた目的ってさ、スライムを捕まえることだよね?........スライム、逃がしていいの?」


当初の目的を達成していない。師匠がスライムを逃がすなんていいのだろうか?


 「えっ、だってリタがスライムを捕まえたじゃないか。」


師匠が私の胸に抱いているスライムを見つめながら言う。

あっ、そっか。私が捕まえたことになるのか。

なるほど。

抱えているスライムを見ながら、納得する。


 「じゃあ、帰ろっか?」


 「うん!」


目的を達したので帰ることになる。

師匠の隣に行き、師匠とレアスライムを交互に見る。

後ろを見て周りにいたスライムの群れを見る。レアスライムは、仲間達を見ながら動く。

さよならを言っているらしい。...........かわいい。


 「じゃあね。スライム君達また、くるね。」


片手をスライム達に向け手を振る。私の行動に反応してスライム達がジャンプしたり、左右や上下に動く。見送ってくれているらしい。かわいい...........。


 「リタ、帰るよ。」


上の方から師匠が私に声をかける。


 「はーい。」


返事をして、師匠からだされた手を握る。

別に、手をつながらくても転移できるのに...........。

そんな、子供じみた不満を抱いていると次の瞬間、景色が代わり、家の前に戻って来ていた。転移して、帰ってきたのだった。


 「ただいま~!!!」


 ドアを開き、家の中に帰った私。

帰ってきた。ほんの数時間だったスライムとの時間。

あっという間だった。


 「........お腹、空いた。」


時計の針は、お昼の時間をさしていた。


 何、作ろう...........。

そう考えながら、台所に向かったのだった。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る