老後の資金


 さて、そうは言ったものの.........。


 「どうやって捕まえよう......。」


 私達の周りにいるスライムを見ながら、捕まえかたを考える。風にふかれプルプルと動くスライムボディ。

可愛いな。愛着がわきそう。


 「スライムの捕まえかたは、決まってない。色々あるんだよ。魔法で捕まえたり、懐かせたりと..............ね?」


魔法で捕まえるのは、以外に簡単そうだが..........懐かせる。

その捕まえかた後々残酷じゃない!?

だって、スライムってポーションの材料になるんでしょ?

なのに、懐かせるって.........悲しすぎる。

スライムを見つめながら、あることに気づく。

あれ?スライム達襲ってこない?

私達の周りに集まってるだけ?


 「師匠..............スライム、襲ってこないね。」


 視線はスライムに向けたまま師匠にこの状況について聞く。

襲ってこないからと言って油断は禁物。スライムから目を離して、襲われるとかは嫌だ。スライム達が襲ってきてもすぐ障壁魔法を使うから大丈夫だけど、絶対はない。もしもがある限り油断はできないのだ。


 「んー、それは.........多分、僕達の方が格上だとわかっているからだと思うよ? 」


 師匠は、スライムから視線を外し私の方を向く。

いつもの笑みを浮かべながらスライムに近付いていく。魔法を発動する様子はないので.........。

まさか..........師匠は、懐かせるの方なのか。


 スライムにあわせしゃがみ黙ってスライムの方に片手を伸ばした。すると、手を差し出された黄色のスライムが左右に揺れたあと手に向かって動いてくる。スライムは、師匠の手の上にのる。手からはみ出しているが安定して乗っている。しゃがんでいる体勢からその場に立ち私の方に身体の方向を向ける。


 「.........可愛いですね。..........スライム。」


 手に乗っているスライムを見ながら感想をのべる。プルプル、ぷよぷよ..........。

マジでこの人、この後スライムをポーションにいれるんだよね?


 空いているもう一つの手でスライムを優しく撫でる。スライムも気持ちいいのか師匠に身をゆだねている。確定だ。


 この人懐かせて捕まえ、ポーションに入れる派だ。スライムを見る顔は、いつもの微笑みの一個上の笑顔。世の女性が見たら倒れるレベルの甘ったるい笑顔である。

その顔をスライムに使うのか!?

スライムの方を見るとわかりずらいがほんのり全体が赤い。照れてるのか!?

あのスライム、女の子なの? いやでも、この笑顔なら男性でも照れるかも.........?

おっ..........恐ろしい.........。


「師匠..........そのスライムどうするんですか?」


 「勿論、ポーションの材料にするよ?」


私の方に顔を向け、ニコッと笑顔で答える。答え終わるとまた、スライムをいじり始めた。師匠.........もしかして、スライムのこと好きなのか?


 「好きなんですか?..........スライム。」


地面にいるスライムを見ながら師匠に聞く。


 「好きだよ。.........研究しがいがあるよね。」


 まさかの研究対象! そっちか!

そっちのパターンか..........。その考えはなかったなぁ。

師匠だったらもう何年も前に研究し終わっていると思うけど。


 「百年ぐらい研究してるけど、いまだにわからないんだよねスライムの身体は.........。時が経つにつれて進化していくから。そのたびに、研究しなおさなきゃいけないから..........面白いよ。」


 地面にいるスライムを見て、手から移動して師匠の肩に乗ったスライムを見る。懐かしそうな表情をする師匠を見て、研究の日々を思い出しているのだろうと思う。


 てか、師匠今さらっと、百年ぐらいスライムのこと、研究してるって言ったけど.........百年も生きてるのか。

ポーションの中身がスライムって言う事実よりも驚いた。軽々とその驚きを越えていったよ。百年前から生きているのか。


 でも、師匠と過ごす内になんとなく師匠は、百年ぐらい生きてそうな気がしてたけどね。毎年、毎年姿が変わらないから。実際の年齢は、それよりも上だと思うけど。


 「あっ! あれ。」


カサカサ。


葉と葉がすれる音がしてそちらの方を見る。

茂みからでてきたのは、水色のスライム。そのスライムは、プルプルと揺れ動きながら私達の周りにいるスライム達の後ろの方に合流してきた。


 「紫色の.........スラ、イ....ム?............ん?何か違う?」


元々集まっていたスライムたちとは大きさも形も色も同じ、はたから見たらどこも変わらない普通のスライム。

だけど、どこか違ってみえる。

何だろう? 何かが違う感じがする。

スライムをまじまじと見て、他のスライムと違うところを探す。さっき見て思ったところと何も変わらない。

あっ。スライムの中心部分、魔力が濃く現れているところ

見つけた。あれって、師匠の言ってたスライムの核..........かな?でも、隣のスライムにもそれらしい核がある。

...........濃さが、違うのか!

もしかして、あれ..........


 「レアな! スライムの核!!!!」


思わず大声を出してしまった。声を聞いて、スライム達と師匠がびっくりと身体を震わせた。


 ごめんなさい...........。でも、あのスライムを捕まえれば老後ゆっくり暮らせるんだよ!!

あっ、でも、一匹じゃダメだね。もう十匹は、いるね。そしたら、安心して老後スローライフを遅れる!


 今は、なかなかハードだけど地獄だけども老後は、ゆっくり暮らしたいそれが私の目標である。

資金調達は、大切だ。


 「うん。そうだね。あのスライム、レアな核を持ってる。レアなスライムだね。」


師匠が言ってるなら確実だ。

奥にいるスライムに向かって歩く私にスライムが道を開けてくれる。スライム達を見ると少し震えているように見える。


 なぜだろう? 怖がらせるようなことしたっけ?


 「リタ。魔力漏れでてるよ。」


後ろから師匠に魔力漏れを指摘され、慌てて確認する。

あ、ほんとだ。魔力が漏れでてる。

自分の身体を見ると魔力が身体の周りに集まり漂っていることがわかった。

スライム達は、この魔力を感じとり道を開けてくれた..........いや、私から距離をとったのだろう。


 「それと、リタの目......ギラギラしてて恐ろしいじゃないかな?」


 「えっ? ギラギラしてる?」


スライムを狙っている目がギラギラしていて、スライム達は本能的に私から遠ざかっているのでは?と師匠は私に教えた。魔力漏れで、離れたとも言われた。


そんなにギラギラしていただろうか?

目はいつもと同じ感じだと思うけど...........。


 「..........狙ってる目だよ。いつもよりやる気に満ちている目に見えるよ?日頃からそうしてくれればいいのに...........。」


呆れた顔で私の顔を見て話す師匠。最後の方の台詞の後には溜め息もはかれながら言われた。


 いや、だってお金ほしいもの。お金大事!!

老後に使うんだから。

でも、いっぱいレアスライムの核取れたらもうちょっと若い内からスローライフが遅れそうである。

憧れてたんだよね~。

スローライフ。前世で読んだ異世界転生ものの小説で「スローライフを送りたい」ってやつあったし、読んでて楽しそうと思ってたんだよね。

うん。いいね!

老後の前にスローライフして、そのまま老後遊んで暮らそう。あれ、それって...........ニート。ちょっとは、働こ。何か簡単にできる自分の趣味を仕事にして......。

うーん。そうだ! カフェとかレストランとかいいかも!

前世から料理してるし、今も作ってる。料理、楽しいから続けらそうだ。

と、将来について今は考えている場合ではない。脳内将来図を頭のすみに追いやり、目の前にいるレアスライムを真っ直ぐに見る。


 レアスライムは、同じところから一歩も動かず私の方を見ている。気がする。実際には、スライムに目や口、鼻がないのでわからないがなんとなくそんな気がした。


 「...........もしかして、レアスライム......このスライム達の群れのボスかな?」


 「どう思う?」後ろにいる師匠に向かって聞く。

油断できないため、身体は向けず声だけで聞いた。さっきと同じで油断は禁物。それに、今は私が師匠の前にでている。先ほどは、師匠と並んで、いや、若干師匠の方が私の前だったためよほど警戒はしていないが今は私が前の方にいる。油断禁物である。スライムにやられて死ぬとか私のプライドが許さない。

自分より見た目弱そうな魔物にやられたくない。それだけは、マジでやだ。

なので、絶対に私よりも弱くても油断しない。


 「違うと思うよ。」


師匠がレアなスライムのボスである可能性を否定した。

そっか、じゃあ捕まえても大丈夫そうだな。

とりあえず、懐いてもらうやつにしよう。



 魔法で捕まえるよりも酷な方法を選ぶリタ。

彼女はこの後おこることを忘れていたのだった。

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