ワイバーンは殴って倒す


 ワイバーンの巣がある谷に落とされた私。

落とされて数秒であっという間にワイバーンとの距離が縮まる。

さっきの女子としてはどうなんだろうと思う叫び声は、引っ込んだ。


 「ギャアァァァァァァァァァァアアア!!!!!!!」


いきなり横からワイバーンの鳴き声が聞こえた。すぐさま、横を見ると近くにワイバーンがいた。

魔力量と大きさは、どちらもボスワイバーンと比べると小さい。

子供のワイバーンだろう。


 「う~ん?遊んでいた子供のワイバーンかな......?」


 空中で手を組み子供ワイバーンをどうするか考える。いや、その前にそろそろこの落下を止めよう。

私は飛行魔法を使い空中に浮く。

今は、止まったと言うべきか.........?

何で先に飛行魔法を使わなかったかって?

フフフフ! よくその点に気づきましたね! 

さすがです!それには理由があるのです!

それは.......忘れてたんです!!

はい。すみません。

めちゃめちゃためましたけど、単純に私が忘れていただけです。すみません。


まぁ、それはさておき.......ボスワイバーンどうやって倒そう。悩む。

てか、今の私で倒せるのだろうか?

ワイバーンだってアホじゃないと思うし、カラスみたいな知能は、あると思うんだよね......。

空中にとまりながら考える。

ん~、このまま倒せなかったら死ぬ。

私......死ぬな。

命助かってもワイバーン倒せなきゃ私が師匠にしばかれる。どちらにしてもヤバい。それに、さっき私、師匠に「鬼畜」と叫びながら谷に落ちた.......。


 「ギャアァァァァァァァァァアアアアアアアアア!!!!!!!」


 「うるさい!!!!」


今、考え中!

声がする方に手をだして水で作った拳を放つ。

ワイバーンを倒すのは、いいとして師匠を「鬼畜」と言った時点で詰んでる....詰んでるな。

私、すでに詰んでるんだよね..............。


 「グェエエエエエエエ!!」


 「ギャアアアアアアアアア!!!!!」


 「うるさい!!!!」


土で作った拳を放つ。ワイバーンの鳴き声がさっきよりも多くなる。

ん~、何か......何か、助かる方法は.......。


 それから、何回、何十回と同じような状況と私の返しが続く。そして、そのたびに火・水・風・土で作った拳が放たれる。


 「グェェェェェェェェエエエエ!!!!!」


 「ギャアアアアアアアアア!!!」


 「しっ......つっ......こい!!!!!」


炎の魔法で拳を作って放つ。

何なんださっきから! 

「ギャアアアアアアアアア!!!」と「グェェェェェェェェ!!!」しかない叫び声。

もっと他に、レパートリーはないのか!? 


何十回目だと思ってるんだ!!しつこい!長い!!

てか............ん? ん?

そこで私は、気づいた。周りを見渡すと何もない。

あ...れ?


 「鳴き声が聞こえ.......な....い?」


いつからだろう。ワイバーンの鳴き声が聞こえなくなった。周りにいたワイバーン達もいなくなっていた。


 「どこに行ったんだろう? エサ取りに行ったのかな?

いや、でも、ワイバーン三、四匹ぐらいで行けばいいよね?」


そのぐらいの数のワイバーンが行ったぐらいで、谷から鳴き声が聞こえなくなるはずはない。だとしたら......。

ふと、周りを見て、上をみてそして、下を見た。


 「どういうこ.......と?」


下には、谷にいたはずのワイバーンが倒れていた。最初に見た子供ワイバーンを始め、他にもたくさんのワイバーンが横たわっていた。

おまけに、倒れているワイバーンは全て目を回している。

えっ?何があったの?何でかってに.........。

ん? そういえば.........。


 ここで思い出してみよう。


 私は、さっきまで何をしていた? 

師匠からどうやって逃げるかを模索していた。

時より、「ギャアアアアアアアアア」とか「グェェェェェェェェ」とか聞こえた.........。


 聞こえて、私........どうした? 確か.......


 「魔法で殴っ.........た.......。」


うわっ! 殴ったな! 私、ワイバーン殴ったわ。

ということは、ワイバーン倒したの.........


 「私だわ。」


なんと言うことだ。ワイバーンを倒してしまった。ボスワイバーンじゃないけど、ワイバーンは倒した。倒したのはいいけど.......。

.......師匠にしばかれる時間が早くなってしまった。

どうしよう。ヤバい、ヤバい。

でも、あれ? ボスワイバーンは、いなかったよね?

もう一度、谷底に倒れているワイバーンを見る。端から端まで見ながらボスワイバーンを探す。

けれど、それらしいワイバーンはいなかった。

すると、私の後ろから大きな影が現れた。


 「ギャアアアアアアアアア!!!!!!!!!」


谷底に目を向けていたため気付くのに少し遅れた。振り返ると後ろに大きな影の正体がいた。

谷にいるどのワイバーンよりも、身体も魔力量も大きなワイバーンがいた。

この谷の主.........ボスワイバーンだ。


 「ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」


さっきの叫び声よりも一段とでかい声で鳴いた。翼をバッサ、バッサと羽ばたかせているワイバーン。翼でできた大きな風で飛ばされそうになる。


 「いた! ボスワイバ「ギャアアアアアアアアア!!!!」」


かぶる。


 「貴方に恨みは「ギャアアアアアアアアア!!!!」」


かぶってる。


 「私のために倒させて.........「ギャアアアアアアアアア!!!!!!!」」


 「覚悟しな「ギャアァァァァァァァァァァアアアアアアア!!!!!!!」」


喋るたびに、ボスワイバーンの鳴き声とかぶる。


.........きっと偶然だ。偶然。よし!! 気をとり直してもう一回言ってみよう。


 「ボスワイ.........「ギャアアアアアアアアア!!!!!!!」」



........プチン。



 「おっ...前!!! わざとだろ!!!」



その瞬間、リタの何かが「プチン」と切れた。

リタは、キレたのだった。彼女の沸点は非常に低い。いや、この状況が彼女の沸点を低くさせたのだった。



 「私の声にわざとかぶせただろ!!!こんのやろう!!!............灰すら残さーーーーーーーーーーん!!!覚悟しろ!!!!!!」



こうして、ボスワイバーンvsリタの戦いが始まった。

が、しかしこの戦いはリタの一方的な虐殺の始まりだった。





※※※




 「これは.........」


 この状況を引き起こした全ての現況である青年.........レスターは、キレたリタをワイバーンの巣のある谷の上からみていた。

見た目は、二十代前半の青年に見えるレスターの実年齢は、リタとレスター、孫と祖父の関係ほどである。


レスターの顔は、とても整っている美男、イケメンである。そのレスターが口をひきつれせてリタを見ている。


 「最初のワイバーン無差別攻撃にも引いたけど.......

これも........どうかと、思うな」


ワイバーンの巣で戦というなの一方的な虐殺を見ながらレスターは、自分の弟子を思いながらリタの母親について思い出していた。


 「カミラとは、似てないね..................」


容姿以外は.........。


 「多分.........。」


 「ギャアアアアアアアアア!!!!!!!!!!」


カミラについて思い出していると、リタと戦っていたワイバーンが苦痛な叫びが聞こえた。


 「終わったかな?」


リタを見ると疲れきった表情をしている。

魔力量を使い切ったのだろう。

普通、それで終われること事態奇跡に近い。

一般的な五歳児であればワイバーンには瞬殺されるところだが、リタは瞬殺されるどころか逆にワイバーンを瞬殺した。


 当然だろう。

リタは、一般的な幼女ではない。魔力量も桁違いであり、魔力量だけならレスターをも抜く。

レスターが今日ワイバーンを狩るようにいったのは、できると確実に思ってのことだった。

これから、リタが生きていくにはたくさんの経験が必要である。そのため、レスターはこれからもリタに経験を積ませていく。


 「君は、魔力も.........人生も.........特殊だから.......ね。」


 誰にも聞こえたないぐらいの大きさで呟く。

その声は、風に拾われ消えていく。


 「さぁ、愛しの我が弟子を迎えにいくとしよう。」


レスターは、リタの元に向かったのだった。





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