第4話「よろずの町医者 After Story」
だボーッと街を眺める。
すると、背後から足音が聞こえた。
少し期待した私がいた。
「森野さん?」
思わず振り返る。
だけど、そこには誰もいなかった。
いるわけもない。三年も行方不明になって、どうせもう・・・。
まだ死んだという確証はないのに、もう二度と会えない気がした。
そう考えると、涙が止まらなかった。
泣いたのも、何年ぶりだろうか。
「う、、、うぅ・・・」
ぬぐってもぬぐっても、また涙が溢れだして、零れ落ちる。
止まらない。止まらない。止まらない・・・。
きっと私は、自分で思っている以上に、森野さんのことを想っていたのだろう。
いい歳して、情けない。
一向に枯れない涙に、立っても、座ってもいられなくなった。
膝をつき、その場に、崩れるように座り込んでしまう。
冷たい雪が、私の膝とお尻に染み渡る。
誰もいない空間で、私の泣き声だけが響き渡る。
もう会えない・・・。
もし会えたなら、私は何を言うだろうか。
まずは、ひっぱたいてやる。私だけじゃない、多くの人に心配や迷惑をかけたこと、悲しませたこと。それを叱ってやる。
それから、抱きついてやる。彼の胸の中で、思いっきり泣いてやる。泣き続けて、泣き続けて、もう、彼を滅入らせてやる。
それからそれから、彼に想いを伝えるんだ。
彼はどんな反応をするのだろうか。困ったような、でも照れた顔をするのかな? それとも、真摯に私の想いを受け止めてくれるのかな?
フラれてもいい。もしかしたら、受け入れてくれるかもしれない。そんな淡い期待。
でも、これはもしもの話だ。
どうせ・・・どうせ。
「うぅ・・・」
また溢れ出てくる涙。
ようやく泣き止んできたと思ったのに、また潤い、溢れ出てきてしまった。
こんな歳になって、恋に苦しむことになるとは・・・。
情けないと言うか、何というか。
「ハンカチ、いりますか?」
背後から、そんな声がした。
気配も感じず、気が付けば、私の後ろにいた。
びっくりした。もちろん、気配を殺して私に近づいてきたことに。だけど、それだけじゃない。
この声・・・見覚えがある。
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