第2話「よろずの町医者 After Story」
次の日。二日酔いが怖かったが、しっかりお酒は抜けてるようだ。
元々少量しか飲んでいないので、怖がるだけ杞憂だったのかもしれない。
「はぁ、、、はぁ・・・」
息を両手の平に吹きかける。
室内と言うのに、暖房のかかっていない診察室は氷点下だ。
白い息がぼわーと吹き出て、消えていく。
看護師の方々が出勤する前に、診察室は暖房で温めておくのが日課だ。
それから、あわただしい朝が始まる。
ここは大きな病院とは違う。よろずの町医者だ。だから、大抵のことは自分でしなくてはいけない。
診察室や待合室の清掃。医療器具の管理やセッティング。他にも、やることは大量だ。
それらを済ませると、ぼんやりとカレンダーを眺める。
今日は平日だが、日付や曜日関係なく、毎日多くの患者さんが来る。この小さな田舎町には、私しか医者がいないからだろう。
午前九時。診察が始まる。
案の定、ひっきりなしに患者さんが来る。
患者さんなんて、来ない方が健康で良いに決まっているのに。そんなことを想いながら、昼になった。
この時間は、私や看護師の休憩も踏まえて、休診時間だ。
いつもなら、森野さんがやって来て、二人で食事をするのだが・・・。
「来ませんね」
忙しいのだろうか。森野さんがやって来る気配がない。
結局、昼休みに森野さんがやって来ることはなかった。
久しぶりの一人での昼ご飯。少し寂しかったような、そうでもなかったような。
次の日の昼休みになっても、森野さんは現れなかった。
その代わりに、驚く人が訪れてきた。
「警察?」
話があるとのことだった。
断る理由もないので、その話を暖房のきいた診察室で聞くことに。
「えっと、森野さんですか?」
「はい。ここに来てませんか?」
「いえ・・・」
警察から話された内容は、衝撃的なものだった。
森野さんが、行方不明になった。
職場に出勤しないので、会社側が通報したらしい。
昨日は森野さんを見ていない。行方不明になったのも昨日かららしいので、辻褄は合う。
「何かあったら、連絡してください」
そう警察官が言うと、病院をあとにした。
早く見つかりますように。私は、そう祈るしかなかった。
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