第9話 後書き
この作品には全てモデルとなる方が実在し、私が皆さんと共に体験した事をベースに仕上げてあります。人に読んでもらう文章を書くという作業は、私にとって、粘土細工の様な物です。どのような手順で書き進めて行くのが正しいかすら理解できていないので、伝えたい事を思いのままに書き連ねていくと、それはやがてまとまりのない、姿形だけが大きな物になってしまいます。それの輪郭を整えたり、きちんとお伝えしたい部分に違う色を使ったり、余分なところを削ったり、逆に小さすぎた所に肉付けしたり、そんな事を繰り返します。果てしない作業です。翌日に読み返すと、昨晩「良し」としたはずの文章に納得がいかなかったり、他の表現が思いついて、何か所も書き直したりしています。ゴールも正解もない所に惹かれるのか、一つ書き終え、疲労困憊し、もう次はないなと毎回思うのですが、翌日にはもう次のテーマを考え、目に映る景色を頭の中で文章にする作業を無意識にしています。今までは文章を書く相手が明確でした。作文なら先生、年賀状は知人。見知らぬ方に読んでいただく文章を書くのは難しく、不安な作業でもあります。及第点でなければ、お返事も通知表もなく、私の稚拙な文章はただ静かに眠るのです。
人には長く生きていれば、それだけの人間関係が出来、その分だけモヤモヤが発生するものなのでしょうか。私はそれが多い方なのでしょうか。ご本人に届く事はないかもしれませんが、この場をお借りして、思いのたけを手紙にしたためる事が出来た事、本当に嬉しく思います。ここへ書いたからといって、全てが許される、思いが伝わるという事ではありませんが、気持ちの整理が出来た事だけは間違いありません。これからも皆さんの事を大切に思いながら、自分の道を歩んでいきたいと思います。文章にさせていただくにあたり、手紙を宛てた皆さんのお名前とエピソードは一部を変えさせていただいております。それでも、あれ?と思い当たる方がいらっしゃったら、穂高からの本音をお受け取りください。書き終えてみて、やはり私は亡き祖母へ感謝の気持ちを伝えたくてこの作品を手掛けたのかなと感じます。墓に布団は着せられぬ。この言葉を今ほど実感している事はありません。楽しいのが、幸せなのが、愛されているのが当り前ではありません。私が言っても説得力がないのかもしれませんが、何かのきっかけになっていただけたらと思います。そして血の繋がり云々関係なく、あなたに愛情を捧げてくれている人がいたら、どうか、後悔なく同じように愛情を注いでください。ご本人に返せなくても、同じ事が出来る優しさを持って大人になって下さい。そこに新しい道があると思います。
皆様の愛深き幸せな人生を願って。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
手紙~私の人生に彩りを添えてくれた貴方へ~ 穂高 萌黄 @moegihodaka
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