出席番号2番 飯野川ジン

 俺には、人望がない。なんとなく最近そう気づいた。今年の春に、バスケ部のキャプテンになったけれど、日に日に俺には向いてないと思っている。


「休憩入るぞ」

 部員達からは気のない返事。もう慣れてしまっているけど、やっぱり虚しい。


 父の影響で、バスケは5歳から始めた。家の庭にも小さなゴールがある。バスケは好きだ。だけど、今の部活の雰囲気はあまり好きではない。奥では、卓球部の連中がいる。あいつらの方が、なんだか楽しそうだ。冴えないヨシトの方が、俺なんかより部員をよくまとめている。


 水道で顔を洗い終えると、テニスコートのユウナと目があった。だよな、ユウナは、予想通りすぐに目を逸らす。


「好きな人ができた」


 ユウナにそう言われた時、俺は何も言えなかった。家に帰りついた後、「誰か教えて」と送ったLINEには返事はなく、次の日に「電話していい?」と送ったメッセージは、既読にもならなかった。きっとウザいことをしたのだろう。


 何がいけなかったのか。告ってきたのは向こうで、上手くいっていたはずなのに。初めて出来た彼女に、俺は浮かれていたのかもしれない。


 ユウナが知らない男と歩いているのを見たのは、その後すぐだ。その時、俺はリュウキといた。


「お前の方がかっこいいのにな」


 俺は、モテない。それは自覚している。身長182センチ、スポーツだって得意だ。結構、有名な美容室のカットモデルに声をかけられたこともある。だけど、俺はモテない。


 小中学ではバスケ一色で、恋愛なんて二の次だった。だからだろうか、俺は皆より劣っている気がする。


「お前、本当に彼女のこと好きだったの?」


 好きってなんなんだろう。ただ、ベッドに横たわると、ユウナからの返事を期待して、スマホを覗く自分がいる。


「それは、執着だな」


 リュウキ、俺もわかっているよ。だけど、それを認めると自分をたもてなくなりそうで、お前にはわからないよ、と言ってしまった。


 俺は、多分、自分が好きではない。愛し方も愛され方も、多分よくわかっていないんだ。


 フリースローは、リングに弾かれる。誰もいない体育館に、ボールのバウンド音だけが響く。そのまま寝転んだ俺は、深いため息をついた。


 愛されたい。


 俺はいつか自分を好きになれるのだろうか。

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