出席番号3番 臼井カズマ
「マジかー、だめだったか」
電話は、1時間も続いている。今日、マイカはショウヤにフラれたらしい。励ましている俺は、内心、喜んでいた。なんて汚い人間なんだろう。マイカがショウヤに告ると聞いて、今度こそ諦めよう、そう思っていたのに。
昨日の帰り際、「俺に遠慮するなよ」と、ショウヤに言った。ショウヤは、俺の気持ちに感づいたのか、一瞬、戸惑った表情をして、「そんなんじゃねぇよ」と答えて帰っていった。
「お前、いいヤツそうな顔して、結構ひでぇヤツだったんだな」
振り返ると、同じクラスのリュウキが、見透かしたような眼をして立っていた。察しのいいショウヤは、俺の気持ちを知ればきっと断るだろう。俺は、ショウヤの優しさに付けこんだのだ。
「最低なヤツかな、俺……」
「いいんじゃないか。多分、皆、そんなもんだろう」
リュウキの言葉に、少しだけ救われた気がした。
去年の夏も、俺は、マイカの邪魔をした。皆で行くはずの花火大会。当日にドタキャンして、ショウヤとマイカを二人きりにした。周りを巻き込んで、二人きりにするようなことを、ショウヤは絶対に好まない。それを分かっていて、俺はマイカに協力するふりをした。
恋愛相談にのっているうちに好きになった。ありがちなシチュエーションで、自分でも呆れている。もし、マイカの想う人がショウヤではなく、俺だったら。そう、何度願ったことだろう。
「ショウヤ、好きな子でもいるのかな」
「さぁ、どうだかな」
気付いたんだ。俺とマイカはどこか似ている。卑怯で弱虫で、負けず嫌い。きっとマイカは、俺だったら慰めてくれるということを分かっている。マイカは、そういうヤツだ。
「あのさ、俺」
マイカは、俺の気持ちを知ったら驚くのだろうか。案外、あっさりしているかもしれない。
言えなかった言葉を、今日言おう。ショウヤには絶対にマイカを渡さない。
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