第33話 驚愕

それにしてもティターナは大丈夫なのだろうか?


あれからもう3週間ぐらいは立っていそうなのだが。


正確な日時など、日の当たらないここではわから無いのだけれど。




連れていかれてからとても長い。




もう売られてしまってるのだろうか。


もしかしたら、すでに殺されてしまっているのかもしれない。




どっちにしたって、私たちには何もできないのだけれど。


それがとても悔しい。


だけど今はレベッカを何としても、守りぬかなければ。






「おい、レベッカ、ちょっとこっち来て手伝え」




またか。




最近看守たちがレベッカにやたらと目をかける様になりやがった。


何もされなければいいんだが。






レベッカは何も言わず、ただ黙って去っていく。


彼女に聞くとただ使われているだけだと言うが。


本当か?




何かしやがったら、たとえこの腕が?げても、あいつらを引っ叩いてやる。






しかし、ミゲルが言っていた、ティターナの脱出ルートを知っている、という話。


もし仮にそれが本当だとしたら、レベッカを安全な所まで逃がしてやれるんじゃないか?




私の命を犠牲にすれば、そこまでできない話ではないかもしれない。


どの道ここにいてはレベッカは危ない気がする。


ティターナに一度聞いてみてもいいのかもしれない。




まぁ、あいつが生きていればの話なんだが……。


あいつ、見てる感じめっちゃ芯が強そうだからな。


色々反発しまくってそうだが。




これだけ帰ってこないんだ。ほんとうに殺られたか……、それか、あいつの容姿の事だ。


買い手がついてもおかしくはねぇ。




珍しいほどに、綺麗な、輝く赤い髪に、真紅のような瞳。


あの目には引き込まれる。


何か持っているように。


きっとちゃんとした身形をしたら、もっときれいなんだろうなあいつ。


もしかしたら、王族の類ではないかと私は思っているんだけれど。






あいつ、目とか取られてなきゃいいんだけど。








レベッカが遅い、   心配だ。






扉が開いた。




レベッカ!!




看守たちが戻ってきた。


だけど、レベッカが泣きながら、あいつらと歩いてる姿を見て、私は、立ち上がった。




「おい!レベッカ!! どうしたんだ。




何があったんだ。なんかされたのか? 




てめぇら、レベッカに何しやがった! 」






「おうおう、勇ましいのう。 




わしらはなんもしとらんよ」




選別人がレベッカの頭を優しくなでる


こいつ、レベッカに来やすく触りやがって。






って、あれは、




後ろから赤い髪の女の子が奴らと一緒に下りてきた。


手にはギブスを撒いている。


まるで、一寸の迷いすらない、まっすぐな表情。




ティターナ……




生きていたのか。




そう、あいつらと一緒に降りてきたのはティターナだった。




だけど、どこか印象がちがう。


いや、何かが、以前のティターナとは違っている気がする。










「ほ~らレベッカ。お前の口から説明してやりなさい。」




私の前にレベッカを立たせると、選別人がレベッカの顔をもって私の方に近づけてきた。






「おい、止めろ。




レベッカ、何があった。


言ってくれ。何されたんだ。




何を言わされようとしているんだ?」






「あ、あのね、ディアンカ、




そ、その、ディアンカが、ディアンカが、」








全然その先を言おうとしない。


「レベッカ。大丈夫だから。


教えてくれ。私が何なんだ」




懲罰房行きか?


それとも、殺されるのか?


まぁ、どっちにしたってレベッカを私の命がある時まで守ってやれるのなら、


それで本望だ。


例え殺されようと、私の命尽きるまではレベッカを守ってやれる。


それぐらいの覚悟ならここに来た時からしている。


レベッカの代わりにだって死んでやると。


だから、それならそれで、動じはしない。






「ディアンカが売られちゃう……」




えっ?私が売られる。


そんな馬鹿な。


私を買いたいやつがいる。


そんなわけがない。レベッカたちならともかく私なんて暴れ馬、どこの誰が買いたいって言うんだ。




それに、それじゃ、レベッカを守れない。


そんな事ってない。


覚悟していたのに。死ぬまでレベッカを守ると。




これじゃ、レベッカはここに置き去りか。


ふざけるな。


そんなのは嫌だ。




「お前のようなじゃじゃ馬でも、買いたいところはいっぱいあるのさ。


お前が行くところは、お前にぴったりの場所だ。


とある鉱山地帯の作業場があってな。


人が足りなくなっていってしまうから、とても大変みたいなんだ。


そんな厳しい力仕事の現場のオーナが買い手だからな、相当きつい人間だと思うが、お前ならすごく役に立つ働きができるとおもうぞ。」






選別人は満足そうに笑っていた。




別に私がどこへ行こうが知ったこっちゃないけど、レベッカを守れなくなってしまうのがとても辛い。




あれだけ私が、命に代えて守ると貫いた。


なのに、恩を返しけれない恩人を置いてここを出ていくのか?


こんな辛いところに彼女を一人置いて。


これじゃ私は、恩を授かったままでおわっちまう。




まだ、レベッカには何もしてあげていられないのに。




助けられてばかりで、私からはまだ何もできていないのに。




「とは言っても、そんなすぐにと言う話ではない。


3日ある。それまでにお前をいい状態にしておかなければならないが、別れを惜しむ時間ならあるだろう。


安心しなさい」




この選別人野郎が、好き勝手言いやがって。


殺される事には動じる事無かったと思うが、売られる事は想定外だ。




これには流石に、恐怖を感じた。




何より、心の支えであるレベッカとはもう3日で会う事は叶わなくなるのだから。








「お前もさっさと入れ」




奥に立っていてティターナが房に入れられた。






げらげらと高笑いをしながら、あいつらは去っていった。








「レベッカ。


大丈夫だからもう泣くな」






「だって、だってぇ、」






レベッカ何とかして見せるから。




隅に座るティターナが目について仕方がない。




暗い表情でまるで自分は孤独だと言わんばかりに俯いて隅に座ってやがる。




ここに入れられて来た時とずいぶん変わっちまってる。




そうとう酷い事をされたんだろう。


こういう場合そっとしておいた方がいいのかもしれないが、でも、ほっておけなくて声をかけてしまう。

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