第32話 レベッカ

私の名はディアンカ。




ここアングリアに家族と暮らしている。


兄ちゃんと、弟を持つあたしはいつも男の子と遊んでいた。


どっちかっていうと家で大人しくしているより、兄貴たちと走り回っている方が楽しかった。






だから、周りからも、女の子らしくないって言われるし、母さんもその面では少し悲しんでいた。


別に悲しませるつもりは無かったんだけど。




周りの環境のおかげで、男っぽい性格らしい私が誕生しちまったみたいだ。




そんな私はいつもの様に、兄貴たちと遊んでいると、男の子たちに揶揄われている子がいた。


その子があんまりにも嫌がっている見たいだったから、助けに入っていた。




私があんな事するなんて考えもしなかった。




「うわぁー。ごめんなさい」




「お前、女のくせに覚えとけよ」




そういって雑魚どもは逃げて行った。








「ありがとうございます」






かわいらしい声でお礼をする揶揄われていた子こそ、レベッカだった。


彼女はどうやらその、気弱な所を男どもに遊ばれていたみたいだ。






「別に、礼言われるような事はしてないし、あんたも、からかわれない様に気を付けなよ」




そういってその日は別れた。




だけど、また囲まれている彼女を見つけて、助け出した。


ほんと良く絡まれる子だね。




前と同じグループの奴らだったけど、追い返してやった。




それからレベッカは私たちのグループと一緒にいる事が多くなった。




でも、これがきっかけで大きな事件がおこってしまう。








ある日私たちは兄貴たちと一緒にいつもの様に戯れていた。


兄貴たちは物知りだからとても楽しい。


今日はどんな悪戯をしようかと話していた時だ。


私たちからしたら小さなお遊びなのだが、周りから見たら悪戯らしい。




当然レベッカも一緒にいて、彼女は私たちのやろうとしている事に、異論を唱えてくる。


良くない事だ、と言い続けるのだが、私が大丈夫だと嗜めると彼女は渋々了承するようについて来る。


でも実際一緒にやっていて、彼女も楽しいと思っているのだと思う。


終わった後、レベッカはホッと一息つくと、なんとも言えない顔をしてるのだから。




そのうち心から楽しいと思ってもらえるんだろうと私は思ってた。








そんないつもと同じように集まって話していると仲間の一人が殴られて倒れた。


不意打ちだった。




立っていたのは沢山の兄貴たちよりも年上であろう男の人たちだった。




そして奥にはレベッカをいつも囲って虐めていた、あのグループの奴らがいた。




どうやあいつらが仕返しの為に仲間を呼んで囲いに来たらしいことはすぐにわかった。




が、どう見ても相手の方が強そうだった。


だけどうちの兄貴は向かってくる相手に怯まなかった。


内の仲間はみんな兄貴に続いた。




こんなに身長差もある私たちからしたら大人に見えてしまう人たちに恐れをなさずに向かっていく兄貴たちがかっこいいと惚れちまった。




私はと言うと、怖がっていた。


だけど、私も仲間だと覚悟を決めて向かって行った。


なんだか兄貴達と一緒ならやれる気がしたからだ。




だけど、兄貴は太刀打ちできなかった。


みんなボコボコにされて、倒れた。






どうやら、最初から負けは決まっていたようで、ボロボロになったうちらをみてレベッカはその場から逃げた。




どうしてだよ?レベッカ。




私ら仲間じゃなかったのかよ。レベッカが戦えないのは知っていた。弱いのも、人を傷つける事も出来ないということも。




だけどせめて、仲間の一員でいてくれているのだと思っていた。


自分の保身だけを考えるような奴じゃないと。


なのに、彼女は自分の身を優先して、負けるとわかると逃げてしまった。


その行動に私は、本当に信じられなかった。










それですめば良かったのだが、


私たちはみんな捕まって倉庫のようなところに監禁された。




そして、囲っていたグループがこいつらが主犯格だと、私と兄貴をさした。




その瞬間私は目をつけられた。


女のくせに調子の乗ってるんじゃねと、平手や、蹴りを私は食らわされた。




私たちは立てないぐらい殴られて、こう突き付けられた。




私たちの両親を殺すと。




こいつらの仲間が見せしめに私たちの家に火を放つというのだ。




そんな?何てことしやがるんだ。両親は関係ねぇだろう。


本当に酷い事をしやがる。


私はそう思いながら、まだ幼かった事もあって、


止めて、と泣きながら懇願したのを覚えている。




だけどあいつらは止め無かった。




本当に私たちの両親を殺そうとしたんだ。






「おい。 あいつらに火を放つように言ってこい」




その命令で走り出すグループ。




うちのお母さんとお父さんが。


こいつら。




兄貴も相当怒っていた。


だけど、縛られた私たちにできる事は無かった。




できるのはこの事態が悔しくて睨むだけ。




あいつらは嘲笑うかのようにしてこっちを見て話す。




「ざまぁみろ。


俺たちに手を出すからこんな目に逢うんだ。


これに懲りたら、二度としない事だ。




まぁ両親はもうこの世にはいなくなるけどな」






お父さん、お母さん、早く逃げて。


私たちのせいでごめんなさい。






そう懺悔をしていたら、悔しくて涙が出る。


兄貴はまだ蹴られている。




死んでほしくない。






すると急に倉庫の扉が思いっきり開いた。




「誰だ! 」




あいつらはびっくりしていて、開いた扉から自警団の人たちが流れ込んできた。




どうして自警団の人たちがここに?




私は不思議に思ったがその後何故彼らここに来たのかが分かった。




後ろにレベッカが立っていたからだ。




「みんな大丈夫?」




大きな声で駆け寄ってきたレベッカ。




レベッカ、




あんた逃げたんじゃ、、、






そう思っていた私が恥ずかしくなった。




「ごめんねみんな。


こうなると思ったから、みんなが大変な事にならない様にと思って私」




「わかってるよレベッカ。


ありがとうだけど、




だけどそれより、私の家に。


うちのお母さんとお父さんが殺されちゃうの!!」




私は必死にレベッカと自警団の人に訴えた。


助けてほしかった。


うちの両親を。






「大丈夫だよ。ディアンカ」






「え?」




「ディアンカの家に火を放とうとしていた集団も、そこに駆け付けた仲間も全部捕まえてもらったから。もう安心だよ」






レベッカの微笑む姿が私には天使に見えた。




「レベッカ。 ごめん。ごめんね。


ありがとう」




私はレベッカの胸で泣いた。




まさか、レベッカに私が助けられるとは思っていなかった。


私がレベッカを助けてあげる事しかないのだと思っていたから。


レベッカは弱い子だからと。


でも違った。


レベッカは誰よりも強くて、勇気があって、私達なんかよりも全然賢い女の子だったんだってわかった時、




私が今までレベッカに抱いて認識を悔い改めた。


私はこの子になんて酷い事を思っていたんだろうと。






案の定、心配して、両親の元へ帰ってみると、私の親は生きていた。


レベッカのおかげだ。


レベッカが助けてくれたんだと、両親も言っていた。




きっと自警団の人たちがレベッカの命で駆けつけてくれて、事の発端を両親に話してくれていたのだろう。






この時からレベッカは私たちの英雄になったんだ。




でも、彼女は何も求めなかった。


ただいつも通り、いつものレベッカのままで、私たちと一緒に遊んでいた。


私はそんな彼女に疑問すら覚えた。


奢らない彼女。今まで奢る人間を5千万と見て来た。


なのに、レベッカときたら。




そんなレベッカに心底、心を動かされた。


いつもの様に謙虚な姿たで来る人を見たことが無かったから。








少なくとも私は、この時から彼女を全力で守ると誓った。


出会ったときから守ってあげようとはしていたが、それよりももっと固いものだ。


たとえ私の命を犠牲にしてでも彼女を守ると誓ったんだ。


だって、彼女にはいくら返したって返しきれない恩があるのだから。




私なんかの命なんて軽いものだ。












それにしてもティターナは大丈夫なのだろうか?

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