第34話 仕上がりへ

「ティターナ、無事だったんだな」






「…………」




、返答はなしか。




「酷い事されたのか?


それ、


その手はどうしたんだ?


あいつらが治療しやがったのか?




そんな事するのかわからないけど。




もしかして、痛めつけられて、その見せしめに捲かれたしてるのか?」






「―――――。」






全く話す気は無いか。






仕方がない。




私も、これからあいつらの調教と言うやつを受けるのだろう。


3日間耐え抜いたとして、レベッカとは離れ離れになる。




はぁ、これからどうしよう。




とりあえず、今日は疲れた。個々の疲れが貯まって、みんな何も考えられないのだろう。




何しかこの状況だけでもなんとかしてみるか。






翌朝、レベッカは私に寄り添うような形で眠っていた。




可愛いやつだ。






こうやって引っ付いて来るあたりが、守ってやらなとと言う母性本能をくすぐられる。


おまけに行動が小さいから余計だ。






ふと、壁の端をみると、やはりティターナは昨日と全く変わらない体勢でいた。


あいつが可哀想になってきた。




「なぁ、ティターナ」




「…………」




反応なしか。


目を開けたまま寝てでもしてんのか?






「なぁ、ちょっと話さないか?




こっち来いよ」






全く。


レベッカには悪いがあいつのところへ行ってやるか。




私が腰を上げると、その衝撃のせいでか、彼女が目を覚ました。






「ん~む、ディアンカ、


おはよぅ~」




「悪い起こしたか? 」




「ううん。大丈夫」




目をこする彼女。




「ティターナ、ちゃん」




私の目線の先に映るティターナを見て私が動いた理由をレベッカは、悟ったのだろう。






「ティターナちゃんの所に? 」




「あぁ」






私たちは色々喋ってみたが、彼女が言葉を返すことは無かった。














そのうちに看守に呼ばれて、ティターナは去って行った。


なんの反抗心もなく。






「ねぇ、ディアンナ? 」






「どうしたんだ? 」




レベッカは見計らっていたかの様に近づいて来た。






「こんなこと言うのはあれだと思うんだけど、ティターナはなんだか危険な気がするの」




レベッカがそんなことを言うなんて。




確かに、ティターナは変わってしまったが、それは懲罰の過酷さから来るものではないのだろうか?




だったら、何とか、気持ちさへ立ち直せれば、もう少し明るくなるんじゃないか?


それともあの時レベッカは、何かティターナのおかしな所でも見たのだろうか?






だけど、あのティターナが看守に呼ばれてもなんの表情も変えず、ついて行ってしまう変わりように、疑問を抱くほどだ。






この後も、何か用事をしては帰って来るティターナに声をかけ続けたが、何一つ返答しなかった。




答えるのは奴らの呼び掛けだけ。


あいつらとしか会話をしない。




牢に帰ってきてから、何度呼ばれただろう。


変わりにレベッカは読ばれる事は無くなって、ホッとしているみたいだが、ティターナの呼ばれる数は頻繁だった。






レベッカに聞くと、雑用などはさせられてるとの事だったが、それではティターナはその雑用をずっと、一人でさせられているのだろうか?




だとしたら、ティターナでも嫌がりそうなのに。






私も、呼ばれてあんな風に変えられてしまうのだろうか。


一体どんなことをされた、あぁも無気力になってしまうのだろうか。




「ディアンナ! ディアンナ・フレスキン」




「準備ができた。来なさい」








呼ばれた。


調教と言うやつが始まるのだろう。




レベッカが心配そうに私の手を握る。




「大丈夫だよ。レべッカ。 


すぐ帰ってくるから」








私は黙って奴らについて行った。


逆らうことなどできないからだ。




それに、城内を歩けると言うのはチャンスでもあるからだ。




そいつらの横にはティターナもいた。


何でティターナが?








私はティターナと入れ変わるように、奴ら目指す部屋へと向かった。




「しかしお前は、見た目に反して、意外に素直だな。


いい事だ。そうしていれば、悪くはならん」






何をいっているんだこいつらは。


今すぐにでも、お前らの顔面を打ん殴ってやりたいぐらいだぜ。


それが、やれる状況だったら今すぐにでも。






「着いたぞ」






何だ、やっぱり拷問でもされるのか?


そこは確かに、酷い事をされていたであろう部屋だが、拷問するには異様だった。




広い部屋の真ん中にポツンと机や椅子が似合わず置いてある。




配膳車のような物の上には、器具ではなく、スプーンやお皿などが置いてあった。






どうやら私は家政婦の練習でもさせられるようだ。






「どうだ、素晴らしい部屋だろう。


お前には持ったい無い。


ここの準備もティターナが頑張ってやってくれたんだぞ。


感謝しないとな」






ティターナが?




あいつこんなことまでこいつらにさせらてたのか。




「お前らは自分が何なのか認識したうえで、ここを出て行ってもらわなければな。




お前は何なのか答えられるか? 」




選別人は私たちは人間以下だという答えでも欲しいのだろう。




なら死んでも言ってやるものか。






「わからんな。


奴隷だよ。主人に忠実に従う、物だ。


最低限、そこだけはわかって出て行ってもらわねばならん


答えられなかったお前は減点だ




さぁ、始めようか」








こうして私の調教と言うやつは始まった。


最初はできなければ打たれ、殴られ、鞭を撃たれた。




食器を並べ、荷物を運び、選別人が不満の無いように動かなければ、何度もたたかれた。




こんな事なら、幾らでも耐えられる。


ただ3日こんな事を乗り越えればいいだけなら。




だが、次第に要望がエスカレートしていった。






それは、私が人間であることの意志を捨てさせるようにしているようにしか思えなかった。




そして私はおsれに反発した。流石に耐えかねる。


奴は私に膝まづいて、その汚れた靴を舐めろと言ってきた。




何年も履いただろう、異臭の放つ靴を、私に近づけてきたのだ。


流石にこれには従えない。




これが、私の気持ちを折る気めてとなってしまった。






ティターナの気持ちが分かった瞬間だった。


こんなこと2日と持たない。




ここは拷問部屋を普通の部屋に見立てた物だ。


見立てたと言っても食卓用の机と椅子があるだけの拷問部屋だが。




時に頭を水にうずめられ、息ができず、手を縛られ、背中を何ども鞭打ちされた。




それはさっきまでのモノとは違って、力いっぱい、何度も何度も同じところを打たれた。


熱を帯びる様に背中が熱くなり、まるで、電気を流されたように、痺れと痛みが走り、体を動かすたびに激痛が走った。




そのうちすぐに血が流れ出した。私は痛みのあまり命乞いをしていた。


「もうやめて、」




何度叫んだろう。


でも止めてくれない。


痛過ぎて、体も動かせない。


私の体はどうなってしまうのだろうか。


もう、牢に帰りたい。




レベッカ……。






それからだ。


私はその恐怖が二度と降りかからない様に、選別人の言葉には従っていた。


もう人間とかそんなのどうでもいい。


舐めてれば、言う事を聞いていれば、あんなことされなくて済むと言うのなら、私はそれに従う。


体を動かすたびに、痛みが走り、あの時の恐怖が刻まれる。




痛くて動きたくも無いのに。


それでもやらなければ、また、いつ止めてもらえるかもわからない、痛めつけが始まる。




あれは私が思っている以上に想像を超えていた。




そうして、3日が過ぎる前に私は房に戻ることなく売り出されることになった。






さようなら、レベッカ。私はあなたを守ることはできないようだ。


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