第29話 嫌な部屋


心底私の体は人が来ることに脅え切っていた。




「おうおう、起きたか嬢ちゃん。




まさか気絶しちゃうんだからよ。






あらら、そいつは酷いな」






私のぶら下がった右手を見て言う。




「お前のその右手、めちゃくちゃ気持ち悪い事になってんじゃねぇか。




お前それ、傷口が膿んで死ぬぞこりゃ


その証拠に、その右手もう動かねぇんじゃないか?


ほっといたら腐ってくるぞ」






死ぬ?私が?


どうして?




腐って死ぬ。いや、そんなの嫌。どうしたらいいの?




「ねぇ、嫌。どうしたらいいの?


どうしたら右手は良くなるの? 」




「お前が良い子にしてりゃこんなことにはならなかったんだ


おめぇのせいだよ。


これに懲りたら言う事を聞いておくことだ。




だけど、お前は選別人が罰を与えると言っていたから、残念だかこの後も続くんだろうな。




「嫌、御願い、もうやめて」




「そいつは、俺が決めれることじゃねぇ。


覚悟決めな」




「そんな、そんなの嫌よ。




私何もしていないのに。


……どうして、 どうして信じてくれないの」




「おめぇがやったのは明確だったろ。


俺まで騙そうとしやがって。それが俺の恨みまで買っちまったな」






「そんあ、どうして、どうして、こんなにいってるのに。


正直にいってるのに、信じてもらえないの」








「まあ、選別人がお前が起きたとなりゃ、やってくるだろう、


そうしたら、また痛い事いっぱい始まるな。




後、回答だが、その右手を切り落としゃいい


そうすりゃ腐って来る前に命は助かるぞ」




そういって看守は満足そうに帰っていた。






私は泣き崩れるしかなかった。




レベッカが優しく抱き寄せてきた。




私はどうなってしまうんだろうか。






泣き止んでからしばらくして、看守と共に選別人がやって来た。


「ティターナ 目覚めたらしいな」




そういって私たちの牢の中に入ってきた。




私は脅える事しかできなかった。


その姿が恐ろしくてたまらなかった。




「さぁ、来なさい、お前はこれから、じっくりと教育していかなければならない」




つまり罰の事よね?


そんなの嫌。もう、こんな痛みを味わうのは沢山。


もう、止めてほしい。






「お願いします。何でもします。だから、もうやめてください。


私が、私が悪かったです」




一生懸命謝る姿の私をただ、彼は見下ろしていた




「それで、改正されたとでも? 


許されると思っているなら大間違いだティターナ」




「どうぢでぇ? 」




「泣いたって何も変わらないから泣くな


いいかね、人間ってのは、ほんとの奥底から変えないと本当に変わらないんだよ




殺人をした人間を捉えて、何か月か拘束して、




私は変わりました。ありがとうございます。




なんて言ってるやつも結局また同じ事をしでかす。




何故だかわかるか?




結局、恐怖を知らなければ人は変わらないんだよ」






そんな。いや、もう嫌よ。


許して




「わ、わだぢはもう、十分恐怖しでいまず」




「それが、形だけなのだよ。


お前はその殺人鬼とまた同じように、同じことをする。


認めたのはいい事だ。そうやって素直でいなさい。




そして、その腐った部分を今から私が変えてやる」




そういって兵隊に私を連れていく用意命令した。






「いやー。嫌よ、止めて。離して」




私は力の限り連れていかれない様に、暴れまわった。




兵士たちは問答無用で動かない右腕をつかんで引っ張る。






「きゃぁぁぁぁぁぁ」




私はあまりの激痛に動きを止めた。


痛くて、痛くて、暴れるどころではない。




房のみんなを見た。


みんなが兵隊を悪い人を見るように、見ていた。




誰か助けて。


私ができる事は、そう思うことぐらいだった。


体は痛みきり、動かすことすら難していた。




だけど、誰も助けてくれる人はいなかった。




誰一人としてその場の私をかばってくれる人はいないのだ。




私を助けてくれる人はこの世界にはもういないのは知っていた。


だけど、それをもう一度確信させる様に突き付けられるのはとてもつらかった。




そして私は房を後にして、とても嫌な雰囲気漂う部屋に投げ込まれた。




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