第27話 罰



嘘でしょ?






私――――――。






その指は真直ぐ私を指していた。




「ふぅむ。お前か」




選別人が鋭い眼光も向けてくる。


そして連れていた兵隊に耳打ちをして、こちらに兵隊たちがやって来って私を引っ張る。






「嫌、止めて。




ミゲルどうして。




痛い、離して」






私は兵隊に腕づくで房の中から連れ出され、皆の前で押さえつけられた。




「なんとまぁ、自分の身のほどをしらんガキよ。


お前のようなものがいるから


他の物たちが惑わされるのだ


自分の立場がまだわかっていないのか。


身の程を知るべきだぞ。




すぐに謝れ!」




最後は大声を上げだす選別人。




「どうして、私は何もしていないわ。


どうして、ミゲル、どうしてこんな事をするの?酷いわ」




信じていたのに、ミゲル。どうして。


こんなのウソだよね?






「おい、嘘を言ったのか?


ミゲル君?


あいつはあぁ言っているぞ? 」






「嘘じゃない。 本当だ。」


すがる様な目をして話すミゲル




「あいつは俺に、逃げ道を知っているから一緒に逃げないかと、話しかけてきたんだ


俺は断ったが、一人では怖いからって」






「ふん、何か証拠でもあるのか」




証拠。証拠なんてなにも無いわ。


だって私たちの作戦もはすべて、仕掛ける前に打つ砕かれて終わっているのだから。


結局何もできていない


何もできなかった。


でもそれが幸をなしたみたい。






「証拠は、あいつが作戦を持ち掛けてきた事。


あいつはすごく頭が切れる。


ここにきてすぐ、足枷を外す為の鍵の場所を見つけ出したんだ。」






「して、そんな事どうやってするんだ?


鍵の場所なんざ、看守しか知らんぞ




なぁ。」








選別人は看守に振った後、笑い出した。




「まさかガキ、看守が仲間だとでも言うのか?」




そういう事?そういう事なの?ミゲル


看守にすべてを押し付けてどうにかしようとしている?




それだったらちょっと無謀すぎるけど、できる限りそれに私も答えて見せる。




「違う。あいつは鍵の場所を知る為にわざと、怪我を理由に看守に鍵を外させたんだ」




「何と、本当か」




選別人が看守に尋ねた。






ミゲル?あなたは何を?


私を、売るつもりなの?




私は信じられなくなって言葉が出ない




何この状況は。嘘よこんなのないわ。


なんなのこれは。


私の頭は、今の状況に理解が追いついて来ない




そんな事を言ったら確実にこの嘘が、本当の話の様にすり替わってしまう。






「そういえば。確かにこいつは枷を外してくれと俺に持ち掛けて外すた。


こいつ、そういう事だったのか」




「違うの、あの時は本当に捕まって殴られた後で、運ぶにも体が動かなかったから」




私は涙ながらに必死に訴えた。


酷い、酷いはミゲル。






「違う、あいつは鍵を見つける為だと、俺に言っていたんだ」




「そんな、どうしてそんなウソを、」




「もういい!




もういい、わかった」




選別人が話を割る






「ティターナと言ったな。


、もうやめろ見苦しい。お前がやったことはこの話の中ですでに明確だ。


これ以上話すことなどあるまい。




死よりも恐ろしい恐怖をこれから味合わせてやる」






彼の話声が一段下がる。


その声が更に私に恐怖を与えた。




「よく言ってくれた、ミゲル。お前はえらい。


お前には褒美をも与えてやらねばならないほどだ」




選別人が満足そうにミゲルの頭を撫でていた。






「それから、そういう事をしたら言うべきことがあるだろう


ティターナ!」




怒りの矛先がこちらに向く






何?何なの?






「な、なにを言えばいいんですか?」




私は泣きながら恐る恐る聞いた






「そんなこともわからんのか。


悪いことをしてごめんなさいだ」






そんな。


私何も悪い事なんてしていないのに。


どうして、ほとんど、作られた話して、私から誘ってない。誘ってきたのも、逃げ出そうとしていたのもミゲルからなのに




私は悔しさで唇をかみしめ、顔をしかめた。




「ほぉ、お前は謝りもせぬという顔をするか」






違う、そういう事じゃない






「やりなさい」




私は思いっきり、お腹を殴られた。




ぐかっ、




い、痛゛ぃ、




そして寄って集って、蹴りを何発も入れられた。




「い、嫌゛ぁぁ、やめてぇ


痛い」






「はやく謝れ」




「ごめん、な、さぃ」




「聞こえんもっと大きく謝れ」




「ごめんなさい」




「もっと、もっとだ」




「ごっふ、ご、ごめんなっぁ、さい、 ごめんなさい」




私は殴られる中、早く止めてほしくて、謝り続けた。


痛くて痛くてたまらない。




「床にへばりつけなさい」




殴るのが止まった。




私は右手を押さえつけられ、そのまま雑に地面に顔を押さえつけられた。




「ちゃんと謝れ」




「ご、ごめんな゛、ざい」






「鼻水を垂らしてきたない顔でなく。ちゃんと拭けこら


マナーがなっておらんな」




そんな事を言われても、手を抑えらえて拭けないし、この体制、右手の手首が自分の方に押さえつけられていて、すごく痛い




一人の兵隊が鎧を付けたまま私の鼻水をすする。


鎧はでこぼことして尖った部分もありその摩擦が強烈な痛みとなって私を襲う。




「きゃあぁぁあぁ」






「も゛ぅ、いやぁ、ごべんなさい、も゛ぅやめて、ぐださぁい」




「だったらちゃんと謝れ」




「ごめんなさい」




「ご迷惑をかけてしまって申し訳ございません。


私のようなごみが二度とこのような事をしない様誓いますだろうが」




「申し訳ございませんでした。


私のよ゛うなごみ、が、二度ど、ぐすっ、このような事をいないように誓いま゛ず」






どうして、どうして、私が―――――。




悔しくて、悔しくて頭がおかしくなりそう。








「よろしい。


その手を抜いてやれ


罰だ」








とても奇妙な大きな音と共に、右腕に激痛が走る。




「ぐ、きゃあっぁぁぁぁぁぁぁっあ」




痛みで私は蹲った。右手が、右手が、すごく痛い。痛いよ。




力が入らない。動かせない




こんな痛い悲鳴を上げたのは生まれて初めてだった。




ああっ、痛い、痛いよ。お母様。




「よし、終わったな。このガキをさっさと連れていけ」




兵士が軽々とミゲルを持ち上げる




「おい?! 


なんでだ! 話がちがう! 




止めろ。約束したじゃないか。連れて行かないって! 」




「なに言ってやがる。約束はしたさ。


だけど、何を夢見てんのか、お前の母と父はもういないぞ」






「なっ、なんだって? 」




「あっ、そうか。お前たちは外の世界を見ず、ここで守られていたから知らんのだな」




選別人が笑う。




「ここ、イーストアングリアは先日落ちた。


戦いに負け、支配されたのだ。もうイーストアングリアと言う国はない滅んだのだ。」




右のポケットから紙を取り出し、それを広げて見せた。




「これは王様からのお達しだ。


ここにはこう書かれておる。




イーストアングリアに住む者たちはすべて皆殺しにしろと


我々に付き従うものは生かせ とな」






そんな酷い事。


私は痛みに耐えながら、聞いた。






「ここに住んでいる奴らは全員アングリアの奴らが、ほとんどだろう。


つまりは、お前らに帰る場所はもうないのだよ


街も、家もすべて焼き払われ、再建が始まっているところだ。




素晴らしいよ、王様は。


一度滅んだ国を甦らせる。


この街がどんどんと美しく生まれ変わっていくのだから。


形を変え、より住みやすくなる町だ」






イーストアングリアが負けた?


滅んだ?無くなってしまったと言うの?


あんなに大きな国が。


たったの一晩で………。




アーネちゃんたちも?


死んでしまったの?






「この国を守っていた奴もいないぞ


すべて皆殺しだ。


落ちた後、残党狩りが開始された




ここいるもの、逃げるものすべてがその場で切られ、捉えられ、首を刎ねられた。


ここを守っていた奴は誰一人いない。


そして聞け旧アングリアの民よ。


お前たちが崇拝していた王も、その家系もすべて根絶やしにされた。


どうだ?これが今の外の状況だ。


それでも、外に出て帰る場所を探すか?」






皆が絶望していた。


もしこの人の言っている事が本当なら、外はここにいる、意地悪な人たちばかりであふれかえっているって事?




そんなの信じられない。




それにアーネちゃんたちまでも死んだ


私の両親の様にとらえられ苦しむアーネちゃんたちの姿が思い浮かぶと、絶望の涙がするすると流れてきた。




「お前たちを守ってくれた王はもういない。


アングリアの者を守ろうと言うものもな。


それでもここを出て歩きたいと言うならどうぞ歩けばいい。




ただし捕まればお前ら死ぬぞ」






ミゲルは膝から崩れ落ちていた。




そんなミゲルを引きずるように兵隊が引っ張っていった。




そんな事よりも、腕が痛い、痛くて痛くて意識がおかしくなりそう。




「そうだ、ティターナ。




明日は楽しみにして置け、こんなものじゃ終わらんぞ。


お前の罰は」




私の意識が遠のく中そんな感じの事を言って選別人は兵隊たちと去っていった。




半目が閉じる。


もう、ダメ。意識が持たない。


私の意識はそこで途絶えた。


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