第24話 選別

「ようしお前ら、一列に並べー」






一つの檻に入っていたグループが順番に並ばされる。








私は選別人と言う人を見た。


それは少し小太りの背の小さいおじさんだった。




鼻の下から両脇に伸ばされた髭。


そして丸眼鏡をかけていた。




どういう訳あ、鼻は尖がっている。








彼はまるで物色するように私たちを見ていた。




「やぁ、みなさん、こんにちわ


これから皆さんのデータを取らせていただきますので、どうぞよろしくお願いします」




そう言って入ってきたおじさんは、一番手前の牢をみて、全員を立たせて並ばせたのだ。






「ねぇ、ミゲル。


あれが選別人って人なの」






「あぁ、そうだよ……




最悪だ」








何が最悪なのかしら?




「あの人たちはどこへ連れていかれるの? 」




「じきにわかるよ


僕たちも連れていかれるから」








ん? 何があるのだろうか?




皆は良さそうな顔をしてはいないみたいなので、良くない場所なのはわかった。






「おぉ、逸材じゃないのか!


君みたいな、若くて美しい女性は素晴らしい。


彼女の準備を」






選別人が別の房から女性を見つけると、兵士に無理矢理引き出されていった。




女性の人はとても嫌がって房に戻ろうとしていたが、兵隊二人組が彼女を連れ出した。




「それから、それからそこの男性諸君はいい働きをしそうだね


これと、それから、これと、そんでこれとこれとこれ。




うん。これらは地下に連れて行きなさい、いい仕事をしてくれるだろう」






「ひぃぃ、嫌だ」




「頼む、止めてくれ」




「何でもします。 お願いします」




そんな声が飛び交っていたが、さっきの女性と同じように彼らは連れていかれて行った。






どうやら、彼に選ばれたら、嫌も有無も無いらしい。だから選別人なのかしら?




「それと、確かアビリアン伯爵の貴女が一人遊び相手を欲しがってたんだが、ん?」






選別人と呼ばれる人がこちらを覗いた。


彼は何故か私たちの房を覗いて暫く黙っていた。


にやりと口角を上げたまま。




ちょっとして選別人が話し出す。


「おぉ、おぉ、可愛いのがおるではないか。


丁度いい。 お前さんがぴったりだな 


ここを開けろ」






扉が開くなりマルクを連れ出した。




「止めて―」




アルヤが全身でおじさんを止めに行ったが、足蹴りを食らって、強く壁に激突した。




「えぇい、鬱陶し、家畜風情が、わしに触るな」




礼儀のいい人でも何でも無かった。






「ようし、連れていけ」






マルクは大泣きしながら、右足を持たれ、逆さづりの状態で兵士に連れていかれた。




「マルク―、マルク―」




アルヤが叫び続けていた。




「うるさいぞ、ガキィ」




看守が房の檻を殴り、その勢いに驚いてアルヤは声を引込めた。




何て酷い事が起こっているの。






「ねぇ、ミゲル!


マルクは? マルクはいったいどこへ連れていかれたの? 」






「くっ。」




ミゲルはただ、悔しそうな顔だけをしていた。






「ようし、次はお前らだ。さっさと並べ」




私たちは一列に並ばされた。




「やばい、やばいよ


逃げ出さないと、逃げ出さないと」




「ミゲル? 」




どういう事なの? 




とにかく私は、流れに乗るしかなかった。




並んで着いた先は何もない部屋




ここに私達は入れられてた。






いったん部屋に集められると順番に奥の部屋へと呼ばれていく。


扉は二つ。


奥の部屋に呼ばれる前にたくさんの人が聞き取りを受けていた。


名前や、生まれ年に出身血、持っている病気などだ。


私もされた。




そうこうしている内に、泣きながら、ミゲルが部屋から出てきた。




「次ティターナ・ルイア」




呼ばれた。


私は奥の部屋へと通された。


ミゲルとは違う方の扉だった。




中に入った先にはさっきの選別人と一緒に、別に男の兵隊さんが沢山いて、扉の前には強固な人が2人居た。






「そこの壁に立て」




そう言われて立った先の壁には、線が引いてあり、その壁に立つ事で、測りのような大きな物差しになっていた。


これで私たちの身長を見ているみたい。




ここには女の人ばかり集められていた。






「何やってる。服は脱げ


全部だ。」




他の人も同じように立たされ調べられている。






あまりにも屈辱的だった。


男の人の前で服を脱げだなんて、そんな事できない。




「い、嫌です」




平手打ちが飛んだ。




「早く脱げ。脱がないとお前の服が無くなるぞ」




それは破いてでも脱ぎ捨てさせるという意味だ。




「お前このまま貰い手が見つかるまで裸で過ごすつもりか? 」




選別人のおじさんが慌てて言う。


「こらこら君、ダメだよ。 手を上げたら。


もっと、大事に扱ってあげて」




「何だと、 こいつが言う事を聞かなかったんだぞ」




今度は私に近づいて来る選別人のおじさん






「んー、




お嬢ちゃん、悪いようにはしない。


だから、今後はちゃんと言う事を聞きなさい。




わかったね。


そうすれば、おじさんたちも何もしないから」






顎を持たれた。ものすごく顔が近い。




さっきの平手打ちの恐怖のあまり、私はただ頷いていた。






「お前らも、彼女を殴るな」




そういって検査と言うやつが始まった。


体重や、視力、聴力などいろんな事を見られた。


私の事はすべて知っておかなければならないとかなんとか。




どんな性格を知る為に、色々お話もさせられた。


お話と言えど、楽しい会話の弾む内容ではない。


そして、向こうからの一方的な質問攻めだ。






他にも後から次々に女の人が入って来て、抗う人がいた。


その人たちは、蹴って殴られ、最終的に必ず裸にされていた。


彼らに対抗できる人は誰一人いなかった。




私は体の隅々まで調べられた。


あれは何時間ぐらい調べられたのだろう。






こんな屈辱を受けたのは生まれて初めてだった。




泣いている人もいれば、怒りに耐える人もいる。


嫌々されながら、自分を押し殺す女の人。




それを気にせず楽しそうに、めんどうそうに調べつくす男の人。


横には何かを記録しているのだろう、タイピングする男がいる。




調べが終わり、最後は服を着て、私は房に返されたが、しばらく何も話せなくて虚ろになった。






長い時間帰ってこなかった人もいれば、そのまま何処かへ連れていかれる人もいた。




この日は何もできないまま次の日を迎えることになった。




房の中は、静寂で静まり返っていた。








翌朝




朝食が置かれた。


もう私たちが房の外に出られる機会はないみたいだ。


挙句の果てに、ごはんまで、以前より、粗末なものになっていた。




冷めたスープのみだった。




お腹がすいた。




私たちはそれでもあきらめず、ミゲルと脱出する隙を観察していた。


それがあったからか、ミゲルとも会話ができたが、マルクを失ったアルヤは元気が無く、黙んまりだった。




私は何か、声をかけたかった。


ただ、そんなに話せる話題は無い。


それでも、そのままにして置く事が出来なかった。






「ねぇ、アルヤ」




アルヤはうつむいたままだった。


私はそんなアルヤをぎゅっと力強く抱き寄せた。




「大丈夫、大丈夫だから」




アルヤは泣いていた。




とにかく私は励ましたくて、泣き止んでほしくて。


ただそれだけ


だって、辛いでしょ? 一人で泣いているなんて。


泣いている人をほっておけない






      何が大丈夫――――― 




       なんだろう?




いい加減な事ばかり言うのね、私。








ギギギギ


扉が開く。




看守が扉を開けて、色々な人が入ってきた。




「こいつらがそうか」




「えぇそうです。


まぁ、見て行ってくださいな」




選別人が先導して、手を拱きながらにやにやと話している。






「あれは何なの?」


アルヤを抱えながらミゲルに聞いた。


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