第7話 正しい答えって何?
「もう、横に座ってもいい? 」
「えぇ、いいわよ。 でも、ターニャちゃん怪我してるんだからね。
変な事したら承知しないわよ」
「怖いわよ、お母様」
薬品をもの不思議そうに見ていたアーネちゃんが横に座る。
「ねぇ?大丈夫?もう痛くない? 」
「うん。大丈夫よ心配してくれてありがとう」
「よかったー」
嬉しそうに思いっきり抱き着いてきた
痛いわ……
アーネちゃん、それが痛いことよ。
痛いけど、でもそれ以上に温もりを感じる。優しい温もり。
あと、脇腹辺りが少し冷たい……。
「あぁ、そうだ、ねぇ聞いてほしいの」
「どうしたの?」
「アーネちゃんのお母さんもいいですか? 」
「えぇ、何かしら」
私はアーネちゃんのお母さんなら、昨日うちのお父様たちがとった、町の人たちへの行動を、どう思うかとても聞いてみたくなった。
だってあんな酷いこと。私は今でも良くないと思って引っ掛かっているから。
他の人の意見を聞くのはとても大切だと思うの。
特にこの人の意見は。誰よりも人を大切に思うアーネちゃんのお母さんだからこそ、参考にしたいと思った。
「でね、話も聞かないで見捨てて行ったの。
それってとても酷い事だと思うわ」
アーネちゃんのお母様は黙って真剣に聞いてくれているみたいだった。
「そうね。確かにターニャちゃんの言う通りね
それはとても酷いわ。
困っている人には手を差し伸べてあげるべきだわ」
やっぱり! そうよね。私のこの思いは間違ってないんだわ。
「でもね、もしその人たちを助けようとしていたら、ターニャちゃんたちはここには辿りつけていなかったと思うわ」
えっ?どういう事?
「もしかしたらこの世にいなくなっていたかもしれない。
お父様もお母様もみんな大切な人を守ろうとしたからそうなってしまったと言ところかしら」
どういう事?まさかこの人もお父様たちが正しいというの?
だったら私にはわからない。私のこの思いはよくないものなのかしら。
ううん、絶対そんなことない。と、思うんだけど。
「ターニャちゃんはとても優しい子だかさ、純粋なターニャちゃんにはまだ難しいのかもしれないわ」
優しく笑うアーネちゃんのお母様。
「でも危ない目に逢ってほしく無いから言うとね、
人間は欲深い生き物なの。 その人たちはきっとお金になるものが欲しかった。
自分の生活を少しでも良くするためにね 」
「それは私たちも、みんなも同じよね? 」
「そうね。同じこと。
だけどそこに自分だけ、が入ってくると他の人はどうでも良くなってしまうの。
見栄えなくやってしまう事はダメな事よ。
でもそれが人。自分の事だけしか考えなくなる。
人はね、いつしか選択を迫られていくの。
もしターニャちゃんが大事なもの二つのうち一つしか持っていけないのだとしたらどうする? 」
私なら、
「きっと大事な方を持っていくと思います」
「そうよね。大事なものは人それぞれ違うから天秤にかけるしかないの。
どちらも手に入れることは私たち人には与えられていないみたい。
そうなると結果ね。その行為は、例え望んでいなくても、誰かの幸せを奪っちゃう事になるの」
「奪う?それは良くない事だわ。
でもどうしてそうなるしかないの?他に方法は無いの?
それじゃあ必ず不幸な人が生まれるってこと?
みんなが楽しく暮らせて、幸せでいれる事はできないの? 」
「そうね、この世界はみんなが一緒ではないわ。
だからみんなが一緒になるように、平和になれるように頑張ってるの」
そんなのってないわ。こんなに素敵な世界なのに。少なくとも私にはそんな苦痛は無かったわ。
「私にはこの世界がとても素敵に見えたわ。そんな酷いこともされていない」
「そうね。こんな事言ったらターニャちゃんのお母さんたちに怒られちゃうかもだけど。
それはね、ターニャちゃんのご両親が、ターニャちゃんを守ってくれているから、見えないだけよ」
アーネちゃんはぽかんとしていた。
確かに私は両親に大切にされていて、守られている。だから、私にはわからないってことなの?
「今はいっぱい守られなさい。それでいいの。それがあなた達の務めよ。
そしてその優しさを世界に振りまいて欲しい」
そういってアーネちゃんを大切そうに抱きかかえアーネちゃんのお母さんの膝の上に座らせる。
「いずれ、あなた達も学ばないといけない時が来る。それは人である以上逃れられない。必然とやって来るわ。
でもそれはもっともっと何年も先の話よ。
だから今はその優しい純粋な気持ちを消してしまわないように大切に育てていって欲しいの」
いずれ消えてしまう?ってこと?
「みんながターニャちゃんみたいな優しい考えの人達だったらこの世界は平和で包まれていられるのにね。
さぁ、みんなが待っているから行きましょうか
薔薇には結構鋭い棘が無数にあるから近づくときには気を付けてね」
私たちは部屋を出て、お母様たちの元へ戻った。
「お母様」
「ティターナ」
心配そうにお母様たちが待っていた。
すみません。お手数をおかけさせてしまいまして」
「いえいえ、このような手当てしかしてあげられませんが」
「何をおっしゃいますか。本当にありがとうございます。
良かったわね、ティターナ」
「うん」
私は満面の笑みで皆のぬくもりに感謝した。
「明後日はターニャちゃんの誕生日パーティね」
アーネちゃんのお母様がみんなに伝えるように言う。
「そうだな。盛大にお祝いさせていただくから楽しみにしておいておくれ」
「王様、すみません。このようなことまで」
「いいのだ。我々の仲ではないか。アルスレット卿」
「感謝いたします」
そういってお母様が頭を下げた。
「良かったわねティターナ」
「はい」
そうか私、明後日で誕生日を迎えるのか。
全然意識していなかったのだけれど、一年って早いものなのね。
私も、また一つ大人に近づけたのかな。
でもお祝いなんてすごく楽しみ。
「おめでとう。ターニャちゃん」
「いやいや、まだ早いよアーネちゃん」
私たちの会話に回りが笑いに包まれた。
「王様、そろそろ……」
「あぁ、そうだな」
「皆さん今日はありがとう。とても楽しかったよ
私はこれからちょっと行くところがあるのでこちらで」
王様の横にいるお付きの人とは別に二人組の男の人が王様の方へ向かって歩いて来た。
男の二人の内一人は兵隊さんみたいで、王様の耳元で何やら囁いている。
「ターニャちゃんもまたね」
王様はお付きの人と一緒に去って行ってしまった。
確かに、もう辺りは夕日が出そうになっていた。
「私たちも戻りましょう」
「そうね」
アーネちゃんが大きなあくびをする。
「長く遊びましたものね。
今日はとても優雅な一日でしたわ。
さぁ、アーネも戻りましょう」
アーネちゃんは戻るのを嫌がった。
「この子ったら、ターニャちゃんには明日も、明後日も会えるのよ。
今日はもうゆっくり休みなさい」
アーネちゃんは納得したのか王妃様と手をつないで帰っていった。
「さぁ私たちもお部屋に戻ろう」
「そうね。あなた」
私もお母様に手を引かれ帰っていった。
そのまま、私は行かなければならないところがあるからと、爺と共にお父様はどこかへ行ってしまった。
夕食時には戻るという事だったのだけれど。やっぱりお父様は人気者なのね。
私もお父様ともっと過ごしたかったのに。
お母様と部屋っでゆっくり話していると少し眠ってしまったみたい。
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