第10話 追い駆けっこ




「お姉さまー」


アーネちゃんじゃないけど、あまりの嬉しさに私もお姉さまに飛びついてしまった。

いつもならこんなことしないのに、今日の私ったらどうしちゃったのかしら。

でも、どうしてもリリアお姉さまに抱き着きたくなったの。


「ちょっと、どうしたの、こんな時間に?

もしかして、何かあった?」


「ううん。違うの。

お姉さまに、リリアお姉さまにどうしてもお会いしたくてそれで」


「もうティターナちゃんったら」


リリアお姉さまは私の頭を優しく撫でてくれた。


「でもこんなところ見られたら大変だよ」


それはそうなんだけど


「おいで、とりあえず、送って行ってあげるから。

ね。 」


「うん」



私はお姉さまの手を握って一緒に歩く。


「ねえ、お姉さま、今日はどこにいらしたんですか? 」


「んーそうね、今日はすごく大忙しだったのよぉ。


まぁ、いつもここでは忙しいんだけど、


さっきまでアーネ様のお召し物を整理したり、寝かしつけていたのよ」


お姉さまは楽しそうに笑っていた。


てか、アーネちゃんのところにいたの?

なら、すぐにアーネちゃんのところに行けば会えたんじゃ?

私の苦労はなんだったのぉ。



「ねぇ、さっき少し見えたのだけれど、お姉さまとお話ししていた兵隊さんたちは、お姉さまと仲がいい人なの? 」


「ん?誰の事かしら? 

さっきの兵隊さんご一行の事かな? ターニャちゃん近くにいたの? 」

すこし驚いてるお姉さま。好きだわ。



「別に知り合いってほどでもないんだけどぉ。

どうして? 」


「ううん。何でもないの。ただ、なんかあの兵隊さん達、向こうの部屋でなんか話すとか言ってたから。」


「えぇー? どこのお部屋?居酒屋さんかな」


いつものように笑っているお姉さま。



「ううん。なんか使われてないお部屋でしたわ。」


「もう。どこのお部屋よ。

このお城にはお部屋なんてたくさんあるわよ」


お姉さまはいつも優しい笑顔だから一緒にいるのがすごく心地が良い。

もっと一緒にいたいわ。

あぁ、この時間の一時がずっと続けばいいのに。


「ねぇ、お姉さま、少しだけ星を見に行かない?」


またいつもみたいに屋上で星を見上げたい。


「ダメよ

お母様に嘘ついてきたんでしょう?

私もお部屋に戻っていないと、またメイド長に怒られちゃうんだから」


お姉さまが頬を膨らませていた。

メイド長に怒られるのは大変みたい。


「それもこれも、誰のせいで一番怒られてるとおもっているのぉー」


「お姉さま止めて、くすぐったいわ」


やっぱり楽しい。



「ねぇ、お姉さま、だったら、少しだけお姉さまのお部屋に行かせて」


「え、それはいいけど」


「それだったらお姉さまはお部屋にいるし怒られないはずよ」


「もぉ、ターニャちゃんたら、でもあなたがお部屋にいるところを知られたら、私また怒られるんだからね?

わかってるのー?」


「うん。もし誰か来たらちゃんと隠れるから。

ね。お願い、少しだけ」


すがる様な目でお姉さまにお願いしたら、あっさり部屋に入れてくれた。

ふふっ。お姉さまの扱いは慣れたものよ。




お姉さまの部屋はちゃんと整理されていて物があまりないからとてもきれい。

それでいて、やっぱり女の子っぽい物で飾られている。



「そういえば明後日はターニャちゃんの誕生日よね?」


「そうみたいなの。私全然忘れていて」


「私もお邪魔させてもらってもいいのかしら?」



「お姉さま来ていただけるなら私はとてもうれしいわ。

ぜひ来てほしい」


「ありがとうございます。 ティターナ様。わたくしのようなものまで呼んでいただき、光栄の極みでございます。」


「んー、もぅ、どうしてそんな話し方するのよ」


「だってこれが普通でしょ」


「普通じゃないよ、そんな話かたされたら嫌ですわ」


お姉さまはまた私をからかっている。ふふと笑って語りあうお姉さま。


「ティターナ様なんて余所余所しいのはいやだわ」


「でもターニャちゃん、皆さん前ではこうでいないと、私が変な人に見られて、お仕置きまでされちゃうんだから!」


「どうしてなの?こんなに仲が良くて、私たちはもうお友達以上の関係なのに」


「それが、メイドという私と、ターニャちゃんという地位の格の差なのよ」


お姉さまは笑顔で訳の分からない事を言うのね。


「んーなんか納得いかないわ それが礼儀みたいなものなのね? 」


「まぁそう言う事ね

 えらいなーターニャちゃんは。 よしよししてあげる」


「もぉお姉さまったらー」


髪がくちゃくちゃになるまでお姉さまとじゃれあって沢山笑い合ってお話居した。


「ターニャちゃん、もうこんな時間だから、そろそろ戻らないと」



「えぇ?、じゃあ今夜はここで私も寝るわ」


「ターニャちゃん」


お姉さまが困っている。

困っているお姉さまを見るのも好き。なんだかとてもいじめたくなる人なのよね、リリアお姉さまって


他の人もよくからかってるとこ見るし。人気者だから仕方ないわよね。


「わかりましたわ。戻ります。

ねぇ、お姉さま? 」


「ん? 」


「せめて誕生日の日くらいは、今見たいにじゃれ合っていたいですわ

その時ぐらいかかしこまらないで欲しいのだけれど」


「あっははっー、

別にかしこまってるわけじゃないけど。

そうね、それは難しいかもしれないわね。」


お姉さまは人差し指を頬に充てて想像しているみたい。


私もターニャちゃんたちとこうして話しては居たいけれど、私の立場では皆がいるところでは……」


そうですわよね、、、、


仕方がないですわ。


「だけどこうしてアーネちゃんや、ターニャちゃんと二人でいる時とかはうんとたくさん話しましょ。

誕生日会も、隠れてこっそり話せる場所がきっとあるわよ」


「うん!そうね、絶対抜け出しましょうお姉さま。

約束ですよ

絶対連れ出して見せるわ」


「えぇ、楽しみにしてるね。

そっか~、ターニャちゃんが私を連れ出してくれるのか~

楽しみだわ。期待しているね王子様」


「任せて、お姫様」


「それじゃおやすみなさい」


「まって、私送っていくから」


「ダメ!お姉さまはここに居て」


「ダメよ、ターニャちゃん今日は遅いから」


「何の為にお姉さまのお部屋に来たのかわからないわ

流石にもう出歩く人も少ないと思うしここまでは一人で来たのだから平気よ

お願いだからここにいて

絶対、こないで。約束よ

じゃないとここで私泊るから」


私は目を細めてお姉さまに言い聞かす


「それじゃね。お姉さま」


お姉さまに力強く抱き着いて私はリリアお姉さまの部屋から出た。


さぁ帰るわよ、って、人気がなさすぎると、とても不気味ね。

だんだん怖くなってきたわ。


あれっ?しばらく歩いてるけど、こんな道通ったかしら……、



完全に道に迷ってる気がしているのだけれど。

ところで私どこにいるのかしら?


お姉さまの部屋ってどこだったけ?


そう思ったら余計怖くなってきた。

取り合えず地下に降りるであろう階段みたいなのがあったらから、


落ち着いて考えよう、ここをこう行って、こっちに曲がって、えっと、

そうだわ、ここを抜けると上に上がる階段がそこに、


無いわね……


どこよここ??


あれ?、この壁の模様覚えてるわ。私が隠れた部屋の近くかも。


ってことはこの扉が私の入った部屋で、

声が聞こえる。誰かいるのね。さっきの兵隊さん達かしら?


で、奥から聞こえるこの騒がしさは。


丁度曲がり角の左側を見る。あの漏れた光。間違いない。酒場ね。



よっかったー。これで帰れるわ。


と同時に扉が開いた。


「おまえ、 ここで何しやがる、」


えっ?


「い、いえなにも、私道に迷ってしまって。」


「へぇ~、そりゃ大変だな。こんな夜に」


「えぇ、でも大丈夫ですわ。やっとわかる道に出てきたのでご心配頂いてありがとうございます」


「お前、何か聞いてたか?」


「いえ?何も聞いていませんわ

たった今通っただけですもの

そ、それでは失礼あそばせ」



なんか怖いから私は足早に去った。


「待てこら」



ひいぃぃー、何で追いかけてくるのぉぉぉぉ!


いやぁー。


とにかく私は泣きながら廊下をかけた。


ありとあらゆる角を曲がって何とか撒けたみたいだけど。


また迷子だわ。何階かもわからない。


ううぅぅっ。

とほほほっ。


「くそっどこに行きやがった」


うっそ、近にいる。


とりあえずあそこの大きな扉に入ろう。

たぶんこの部屋には入ってこないはず。

てか、誰でもいいから居て。


私は大きな扉を閉めた。


立派なお部屋だわ。大きな扉にあったお部屋ね。


「どなた?」


誰かいた。それもそれでなんて言おう。





「あなた、ティターナちゃん? 」




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