第9話 冒険ドキドキ


「何だい迷子か?こんな夜中に出歩いちゃあぶないよ」


「あはは、すいません。そのお手洗いに行っていて、今帰るところでして」


「そうかい、気を付けて帰んなよ」


「はーい おじさんも気を付けてね」


おじさんは後ろ手に手を振って去っていった。


ふう。びっくりしたわ。危ない危ない。

連れ戻そうとする人だったらどうしようかと思ったわ。


まぁ、お母様が疲れて寝ていた隙に抜け出しのだけど、起きたとしてアーネちゃんの様に騒ぎにはならないから大丈夫。

なぜなら、ちゃんとお母様の前に書置きをしてきたからね。


『アーネちゃんと遊んできます。アーネちゃんのお母様のところに行ってます。

だから、心配しないでください ティターナ』

ってね。

これで完璧よ。

私はアーネちゃんみたいに、ただ闇雲に飛んできた訳ではないわ。

それにこういうことはアーネちゃんのおかげで学んだもの。

対策はしてあるから大丈夫だけど、お城の兵隊さんや、特にメイドの人に見つかるのだけはダメだわ。

何としても避けないと。



って、しまった。


今の人のおかげで、あの人たちを見失ってしまったわ。

どうしよう。

せっかくのチャンスだったのに。

仕方がないわ。この辺をうろうろするしかない。


まずはあそこを左に曲がってみるわ。


と曲がった先にいきなり兵隊がいるじゃない。


この道は通れないわ。

だったらこのまままっすぐ行こうにも、気づかれないようにいかないと。


何かいい策は無いかしら。

例えば石とかを投げてみるとか、それを見て拾ってる隙に通る。

いやダメだわ。そんなものを投げたりでもしたら、飛んできた方向を真っ先に伺うはず。

それでもって、お城のどこにそんな都合のいい物が転がっているというの。


だったら書物でも読んだ動物の鳴き声を出しってその隙に……


音なんてだしたら、音の鳴る先、つまり真っ先にこっちを向くわね。

問答無用で却下だわ。


しかたがない。こうなったら。

私は物音を立てないように、普通に通ってみた。


あら、意外に気づかれないものね。

すんなりと通ることが出来た。


良かったわ。

そのまま奥に進むと、何やら灯りが漏れた騒がしい声の漏れる場所が。


ここだわ。


そろりと中を覗いてみると、男の人たちがお酒を飲み、歌い、踊り、騒いでいる。

女の人もいるわね。

酒場はここに間違いないみたい。

でもここからじゃ良く見えないわ、もう少し中に入ってみないと、


きゃあ、


私は何かに押されるように無理矢理部屋に押し込まれた、


「おっとぉ、なんだぁ、なんかにあたっちまったかぁ~、


おんぃえ、嬢ちゃん、こんあところで寝てちゃあぶないぜぇ~


はっはははははっ  気ぃつけぇなぁよぉ、」



痛たたたあ、 どうやら酔っぱらわれている方に押されたみたい。

勢いで中に入ってしまったわ。ちらっと周りを見渡したけど、すごくうるさい場所。

耳がおかしくなりそうだわ。


こんなところに本当にリリアお姉さまがいるのかしら。


「おい! なんだ、こんなところにガキがいるぞ、

、誰の子どもだぁ」



大声で部屋中に呼びかけんばかりに大男が声を上げる


ヤバいわ。そんな大きな声出さないで、

私はすぐさま、その場から逃げ出した。


なんてお下品な人なの。声が大きすぎるにもほどがあるわ

見つかってしまうじゃない。

暫く部屋を出て様子をうかがってみたけれど、酔っぱらっていると思われたのか、特に何事もないみたいね。

もう全く、嫌だわこんなところ。


ただリリアお姉さまにお会いしたいだけなのにこんな事だったらアーネちゃんも誘うんだった。


後ろから男性の話声。また人


ヤバい隠れなきゃ。


とりあえずそこの扉をゆっくり開けてみた。

もう中に人がいた時はその時で何とかしよう。

そう思って開けてみたら見事に誰もいない。

チャンスだわ。私はゆっくりと扉を閉めて中に入った。

部屋は薄暗い。

幸い窓のカーテンが空いていたの部屋の中を見渡すことはできる。


「で、どうするんだ」


「しっー。ここじゃまずい」


声が近づいて来る。


早く通り過ぎて。


「だけど、もう明後日だぜ」


「黙れ、静かにしてろ、聞かれたらどうするんだ」




ドアノブが回る


嘘、こっちに来るの?

なんでぇ、ヤバい隠れなきゃ。


私は奥の部屋に入って扉の横の木棚に身を寄せる。


「あほかお前は。

周りを考えろ」


「悪い、でも、俺、落ち着かなくて」


「わかってる。手順間違えりゃ俺たちゃ一瞬で終わりだからな」



早くどっかに行って。私の心臓が早く鼓動を打ち続ける。

息を止め、心臓の音を殺そうと必死で、涙が込み上げてくる。



「とりあえず、ここで話そう、ここなら人がいなさそうだ


あいつら呼んで来い。」


「俺はちとトイレを済ませたら、ここに戻るからよ」



そういって男たちが出ていったみたい。


はあぁー。

何?あの人たち?本当にお城の人?

とりあえず、今のうちに出ないと。

後30秒くらい空けててから出れば、あの人たちの姿も無いはず


……。

よしたった。

扉を開けて外の様子を見る。よしいないわね。

そっと扉を閉めて酒場のほうに戻ろう。



はぁっ、、はぁっ、

2階、3階を軽く探し回ったけどいないわ、てか、広すぎるのよここ。


どうしよう、地下とかもあるみたいだけど、あんなところにお姉さまがいくとは思えないし。

しかも一人で行くのは怖いし。そこは止めとくとして

やっぱり今日は会えないのかな。そろそろ戻らないとさすがにヤバそうだし。



とりあえず酒場のほうから帰ってみようかしら。

ほんとしょぼんよ。

とぼとぼ歩いていると、もう一回かけてみたくなって見える範囲で酒場を覗いてみた。


あれ?お父様?まずい。


すぐさま頭を引っ込めたけど、奥の席にお父様とその他たくさんの兵隊さんやいろんな人がいた。

またお話かしら。大人は自由な時間がたくさんあっていいわね。

仕方がない。今日は帰ろう。

お父様に見つかっては嘘がばれてしまうわ。




「あぁ、そうか、そうだよな」



また男の人の声。遠くからだけど聞こえてくるからきっとこの近くに誰かいるのね。

もう別に見つかってもいいわ。

このまま歩いて行こう。



って女の人の声、これって……

聞き覚えがある。


さっと柱の後ろの隠れて覗いてみると、男とリリアお姉さまだわ!


男の人3人とリリアお姉さまが何やらお話しているみたい。

やっと会えたわ!

やったわ。お姉さま。お姉さまよ。

今すぐ行きたいけど、なんか入りずらい会話をしているわ。

行ったらまずそう。

あのマークにあの服装2人はここの兵隊さんみたいね。

もう一人はお客さん?かしら。マントで顔が見えないのだけれど


リリアお姉さまと何話しているのだろう。私も話したいのに。

でも楽しそうな話ではなさそうね。お姉さま笑ってないし。


それにしてもあの男の人の声どっかで聞き覚えがあるような。

あ、あの時あの部屋に入ってきた男の人の一人だ。

間違いない。ここの兵隊さんだったんだ。

な―んだ。

でもなんか、嫌な感じで思ってしまうのはなんでかしら?

私嫉妬しているの?いや、まさか、もしかすると、最初の出会いが悪かったから悪い印象が勝ってるだけかも。

せっかく隠れたのに、わざわざ私のいる部屋に入ってくるんだもの。

他にもへやがあったのに、何故わざわざ私の隠れた部屋を選んだのか。

それでちょっと嫌な人とと、思ってるだけかも。

最低ね私ったら。ダメダメ、そんなんじゃ素敵なレディにはなれないわ。



マントの人と目があった?!


恐怖のあまり私は壁に引っ付いたけど、あの人私を見てた?

どうしよう、こっち来ちゃうかな。

せっかくリリアお姉さまと会えそうなのに。

どうしようどうしよう、どうしよう。


でも、私の気のせいかも、結構距離離れてたし、顔見えないから、私がそう思い込んでるだけかも。

こっちに来る足音も聞こえないし。


もう一度顔をのぞかせてみる。

あれ?いない。

あーリリアお姉様が行っちゃう待って!



私はお姉さまを全速力で追いかける。



「お姉さまー、

お姉さまー、待ってください」



「た、ターニャちゃん?」



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